罵声浴びせるチームにも「学べるものある」 “楽しいだけ”に陥らないための積極行動

多賀少年野球クラブの辻正人監督(右奥)【写真:喜岡桜】
多賀少年野球クラブの辻正人監督(右奥)【写真:喜岡桜】

多賀少年野球クラブの辻正人監督力説…楽しいだけでは「勝利から離れる」

 楽しさと強さの両立は可能だが、野球を楽しんでいるだけで強くなれるわけではない。全国制覇3度を誇る滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が1月31日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベントに出演した。「世界一楽しく! 世界一強く!」を掲げてチームづくりしている辻監督だが、「楽しさだけで入ると、勝利からどんどん離れていく」と訴えた。

 辻監督は指導者による怒声罵声を一切禁止し、楽しさと強さを両立するチームをつくっている。監督やコーチがサインを出さず、選手同士のアイコンタクトやサインで試合を進める「ノーサイン=脳サイン」で2018、2019年に全国大会を連覇した。かつては毎年30人ほどだった所属選手は現在、130人を超えている。

 多くの指導者が理想に掲げる、楽しくて強いチームづくりのヒントを知りたい。「TURNING POINT」による「全国V監督3名が生回答 オンライン指導相談会」に参加した少年野球の指導者や保護者らは、辻監督に指導方針や練習法などを直接質問した。その中で、強くて楽しい野球の秘訣を問われた辻監督は、こう回答した。

「勝つためには技術や戦術が必要です。楽しさだけで入ると、勝利からどんどん離れていきます。多賀少年野球クラブでは、どちらも求めていますが、楽しくしていたら強くなるわけではありません。裏付けされた勝利への導き方の中で、選手を楽しませるにはどうしたら良いのかを考えます」

丸一日の長時間練習はせずとも限られた時間で質の高さ追求

 ワイワイ楽しんでいるだけ試合に勝てるほど野球は簡単ではない。辻監督は選手たちに上達する楽しさや考える楽しさを伝えている。小学校低学年や野球初心者にも、アウトカウントや走者によってどんな戦術が有効なのかを座学で教え、パフォーマンスアップにつながる体の使い方を伝える。

 丸一日使った長時間練習はしていないが、一定の練習量をこなし、限られた時間で質の高い内容を追求する。辻監督は「楽しむことは真似できても、勝つことを真似するのは難しい」と表現した。チームを強くするには、強いチームの練習を積極的に見学して、勝てる理由を学ぶ方法を勧める。

「もし、厳しい罵声を浴びせているチームと対戦して常に負けているとしたら、勝つ野球を確実にやっている部分を学びにいけばチームを強くできます。罵声を浴びせて選手にストレスを与えている部分は真似しなければ良いわけです」

 楽しさの延長線上だけに勝利があるわけではない。強いチームをつくるには、確かな戦術や技術が必要になる。

(間淳 / Jun Aida)

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