体育授業でも野球人気“下降傾向” 楽しさ知って…裾野拡大へ「高校球児の影響力」

横須賀市で開催された「野球で遊ぼう2024」で参加者と楽しむ高校生たち【写真:高橋幸司】
横須賀市で開催された「野球で遊ぼう2024」で参加者と楽しむ高校生たち【写真:高橋幸司】

神奈川県高野連が小学生・未就学児対象「野球で遊ぼう」開催…慶応・丸田らも登場

 プロの施設を使い、高校生が子どもたちに野球の楽しさを伝える“画期的”なイベントが行われた。神奈川県高野連主催による、小学生・未就学児を対象とした「野球で遊ぼう2024」が4日、横須賀市にあるDeNAのファーム施設「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」で開催。昨夏の甲子園で107年ぶりに全国制覇を果たした慶応の選手や、独立リーグ入りが決定した選手、横須賀地区周辺の高校の選手たちが、約500人の子どもたちや保護者と野球を通して交流を楽しんだ。

 プロ野球・DeNAが使用する高さ22mの巨大な屋内練習場に、高校球児と子どもたちの歓声と熱気が充満した。キャッチボールやストラックアウト、スピードガン、ティーボール、塁間ダッシュ、ノック体験……。高校生たちがサポートする中で約5時間、野球未経験の小さな園児も含めた参加者たちは、思い思いに“野球”と触れ合った。

 昨夏甲子園Vの慶応からは丸田湊斗外野手、八木陽内野手、渡辺千之亮外野手、延末藍太内野手の4選手、そして、BCリーグ・神奈川フューチャードリームスへの入団が決定した三浦学苑・原田京雅捕手もサポート役に。特に丸田は、世界一に輝いたU-18ワールドカップで着用した日本代表ユニホームを特別に着用。「学校でも、地域の少年野球チームを集めて野球教室を毎年やってきたので」(丸田)と小さい子との接し方もお手のもので、3年生5人は記念写真やサインにも気さくに応じていた。

 県内の各高校が持ち回りでサポート役をしながら、競技人口の裾野拡大を目指す県高野連のこのイベントは、コロナ禍を挟んで今回で4回目。横浜隼人野球部元部長で、県高野連専務理事を務める榊原秀樹さんは、開催意図をこう説明する。

「高校の教員をしていて実感するのは、『野球の人気が落ちてきている』ということ。体育の授業でも、他球技だと生徒たちは喜ぶのに、ソフトボールをやるとなると、あまり反応が感じられない。なぜなら、これまで野球に親しんだことがなく、ルールがわからないからです。だからこそ、小さな子どもたちに、少しでも『野球が楽しい』と思ってもらえる、このような時間が大切になるんです」

参加者とキャッチボールを楽しむ慶応・丸田(左)と渡辺【写真:高橋幸司】
参加者とキャッチボールを楽しむ慶応・丸田(左)と渡辺【写真:高橋幸司】

野球を知らない保護者「高校生が優しく教えてくれるのはありがたい」

 指導に当たる球児たちにも相乗効果がある。丸田は「子どもたちに『野球って楽しい』と感じてもらえたら、高校野球の人口が増えることにもつながるだろうし、野球界そのものの競技人口も増えてくると思う。そういう機会に立ち会うことができて良かったです」。

 丸田と同じ横浜泉中央ボーイズ出身で、三浦学苑打線の主軸を担う柴山竜聖内野手(1年)は、「自分から子どもたちに自己紹介をしたり、目線を同じにして親しくなることを心がけました。夢中でボールを追いかけて、いつの間にか日が暮れていた少年野球の頃を思い出して、一緒に楽しめたし、いい勉強になりました」と刺激を受けた様子だった。

 参加者からも好評だ。DeNAファンの親子5人で参加した父親は、「横須賀では2軍選手が登場するイベントには来たことがありましたが、年齢も近い高校生が教えてくれるというのは新鮮でした」。昨春のWBC優勝をきっかけに野球を始めたという息子と来場した母親は、「私自身は野球のことを知らないので、高校生たちが優しく教えてくれる機会があるのは、本当にありがたいです」と語っていた。

「高校野球の影響力が、子どもたちに対してあることも感じられました。野球人口を一気に増やすのは無理でも、1人でも2人でも、ここで経験してくれた子たちが、野球を始めて高校まで続けてもらえれば、イベントをやる価値があると思います」と榊原専務理事。参加者数も回を重ねるごとに増加。今後も地道な継続で、裾野拡大に力を尽くしていく。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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