足腰強化のはずが…走り込みで陥る“食い違い” 長短の選択ミスで「打球飛ばなくなる」

下半身強化の定番「走る練習」の目的と効果とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】
下半身強化の定番「走る練習」の目的と効果とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

東京農大・勝亦陽一教授が指摘…走る練習が逆効果になる失敗例

 野球は足腰が大事。時代によって理論が変化する中でも、下半身の重要性に異論は少ないだろう。下半身を強化する王道といえば、走るトレーニング。立ち方を中心に体の使い方を研究、指導している東京農業大の勝亦陽一教授は、練習の目的や意図を考えないと逆効果になるケースがあると指摘する。

 勝亦教授は少年野球からプロ野球まで幅広いカテゴリーの選手を指導している。特に、立ち方や体重移動など下半身の使い方を重要視している。野球をする時に唯一、地面と接しているのは足の裏であり、地面から得た力を体幹や指先までロスなく伝える動きがパフォーマンスに直結すると考えているためだ。

 勝亦教授は1月27日に静岡県掛川市で開催した講演でも、下半身の使い方やトレーニング方法について詳しく解説した。その中で、トレーニングの選択を誤り、せっかくの努力が逆効果になったケースを紹介した。

「打球を遠くに飛ばしたい選手が体の切れを出そうとして長距離走を積極的に行った結果、打球が飛ばなくなる失敗はよくあります。長距離走のような持久系のトレーニングは、脂肪量とともに筋量が減ります。選手は体が軽くなって俊敏に動けるようになったと感じても、筋量が減ったことでスイングスピードは下がり、結果として打球も飛ばなくなってしまいます」

東京農業大の勝亦陽一教授【写真:間淳】
東京農業大の勝亦陽一教授【写真:間淳】

投手に推奨の短距離ダッシュ「速球を投げるには瞬発的に力を出す動きを」

 投手の練習も、目的と得られる効果が一致していないと、時間をかけただけの成果は得られない。勝亦教授は「投手の『走り込み』に関しては様々な定義や議論がありますが、適切な内容を行えば走るトレーニングは投球に効果があります」と語る。

 勝亦教授が投手に勧めるのは、短い距離のダッシュ。一例として、休憩を挟みながらの30メートルの全力ダッシュや、20メートルのダッシュと20メートルのジョギングを繰り返して100メートル走る練習などを挙げる。

「投手の動きは軸足で加速して、踏み出す足で減速するのが基本となります。速い球を投げるには、ダッシュや急停止のように瞬発的に力を出す動きが必要です。トレーニング効果を高めるには、休息をしっかり取って、1本ずつ全力でダッシュすることをお勧めします」

 プロ野球のリリーフ投手のように、球数が少ない場合は瞬発力を中心にトレーニングすれば良い。ただ、1試合で100球ほど投げる先発投手であれば、ある程度の体力は必要になる。疲労で下半身の動きが悪くなれば、球速や球威は落ちてしまう。

 スタミナ強化で勝亦教授が提案するのは、「1試合で5打席連続ランニングホームランを打った後、マウンドに立つ想定をした練習」だ。高校生までは投手も打席に立つ。「ランニングホームランを打った直後でも、普段通りの投球ができる体力づくりが基準になります」と勝亦教授。そのためには、100メートルや200メートルの長めの距離を全力で走るインターバル走も必要になるという。練習やトレーニングは目的を明確にしてこそ、パフォーマンスアップにつながる。

(間淳 / Jun Aida)

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