令和の指導者に必須「意見を聞く」スキル 選手の心開かせる前談と“座る位置”

「野球まなびラボ」代表理事を務める日本工業大の松井克典准教授【写真:本人提供】
「野球まなびラボ」代表理事を務める日本工業大の松井克典准教授【写真:本人提供】

日本工業大でコーチングなど研究…松井克典准教授「『俺についてこい』という時代は終わり」

 昭和の時代、選手は監督と話をしづらい雰囲気があった。それほどまでに監督は絶対的な存在であり、練習メニューや采配、起用法などで意見を言えば、指導が厳しくなったり、時には試合にすら出られなくなるといった不利益が生じることも少なくなかった。ただ、昭和から平成、令和へと時代が移り変わった今、指導者と選手が一体となってチーム作りを行うことが理想とされる。

 それでは、現代の指導者に求められる資質は何なのだろうか。野球指導者のための学びの会「野球まなびラボ」(埼玉県さいたま市)代表理事を務め、日本工業大学でコーチングとチームビルディングの研究を行っている松井克典准教授は、「人の意見をよく聞くこと」だという。

「人のことをよく観察して、意見を聞く。自分の野球観や人生観をチームに当てはめすぎないことが大切です。『俺についてこい』という時代はもうとっくに終わっています。みんなが幸せになるような仕組み、仕掛けができる指導者が、これからの時代に求められています」

 ただ、グラウンド内で監督と選手が対等に話す場など、そうは訪れるものではない。そこで松井氏は、監督が選手の話を1対1で聞く「1on1ミーティング」の活用を推奨する。この1on1ミーティングが普段の面談と異なる点は、監督が選手から話を聞き出す場だということ。ふんぞり返った姿勢をとったり、上からの立場で物を言えば、選手は立ちどころに心を閉ざしてしまう。

「まずは監督が一人ひとりに興味を持つというところが大事です。それが1on1ミーティングでの質問力になる。あとは、自分が目線を下げて、その子の立場に立ってインタビューができる能力が必要になります」

1on1ミーティングは園児でも小学1年生でも「全部員に対して行うことが大切」

 座る位置にも配慮が必要だ。心理学の「スティンザー効果」によれば、対面は「敵対的」、直角は「有効的」、並列は「親和的」だと言われている。互いが心を開いて話をしたいのであれば、対面は避け、机の角を挟むように「くの字」か、並列の位置で座った方がベター。お茶菓子などを用意し、最初はその選手の趣味や世間話から入ることで、気持ちも打ち解けてきて、より本音を知ることができる。

「対面で座ると、就職の面接みたいになってしまい『一緒のこのチームを作っていこうぜ』という雰囲気がなくなってしまいます。子どもは大人に呼ばれると『怒られんじゃないか』『だらしないところを指摘されるんじゃないか』と本能的に思ってしまいます。『君のいろんな思いを聞くよ』という姿勢を形から出すこと、心理的障害を取り除いてやることが大切です」

 この1on1ミーティングは、全部員に対して行うことが大切になる。大学や高校、中学はもちろん、例えそれが学童野球であってもだ。

「小学1年生だからといって答えられないことはありません。何なら幼稚園の子でも大丈夫。もちろん、子ども受けするような話題やしゃべり方といったテクニックが必要です。指導者も野球を教えるだけではなくて、人を育てているということを前提に勉強をしていかないといけません」

 大学、高校、専門学校、そして学童野球と25年の野球指導者歴を持つ松井氏も、理想のコーチングを日夜研究している。その中で、指導者のコミュニケーション能力の高さが、チーム作りにおいて重要なスキルであることは間違いない。

 松井氏は29日に開催されるイベント「人気少年野球チームに学ぶ『主体性が育つ組織づくり』」に参加。指導現場、そして学術的な側面から見たチーム組織論を余すことなく披露する。

松井克典氏も参加…子どもたちが能動的に動けるチームづくりを徹底討論

 First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、29日午後8時30分からオンラインイベント「人気少年野球チームに学ぶ『主体性が育つ組織づくり』」を開催します。滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督をホスト役に、東海中央ジュニア・竹脇賢二総監督と松井克典氏が、野球を通じて子どもたちが能動的に動けるチームづくりのヒントを語り合います。詳細は以下のページまで。

■オンラインイベント「人気少年野球チームに学ぶ『主体性が育つ組織づくり』」詳細

チームづくり“成功の秘訣”を徹底討論 「辻正人の少年野球サミット」オンライン開催

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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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