指導現場で増える“深い筋肉”への過大評価 バランス欠くと「腕を強く振るのは無理」
全国2冠チームの藤田真悟トレーナーが勧める「インナーマッスル」鍛えるチューブトレ
大きな筋肉を投球に生かすには、インナーマッスルと呼ばれる小さな筋肉の強化も大事になる。昨年、中学硬式野球で日本一を成し遂げた兵庫・関メディベースボール学院の藤田真悟トレーナーが、インナーマッスルを鍛えるメニューを解説。筋力トレーニングのように力いっぱい体を動かすのではなく、筋肉の奥が“じんわり熱くなる”負荷を心掛けると効果があるという。
最近は小・中学生の指導現場でも、「インナーマッスル」という言葉を耳にする機会が増えた。パフォーマンスアップに必要な筋肉であることは間違いないが、藤田トレーナーは“過大評価“されている一面を指摘する。
「インナーマッスルはすごく小さい筋肉です。『インナーマッスルを鍛えておけば何とかなる』と言われることもありますが、腕を振る時に使うのはアウターマッスルと呼ばれる大きな筋肉です。インナーマッスルを鍛えて腕を強く振ったり、加速させたりするのは無理だと考えています」
肩周りのインナーマッスルには4つの筋肉があり、いずれも大きさは手のひらよりも小さい。腕を振る時には、あくまで大胸筋、広背筋、三角筋といったアウターマッスルがメインになる。藤田トレーナーは「力強く腕を振る時に、骨と骨のつなぎ目を安定させる必要があり、その役割を担うのがインナーマッスルです。インナーマッスルを鍛えるとアウターマッスルが生きてきます。両方をバランス良く鍛えることが大切です」と説明する。
球の速さや強さは「下半身で腕の加速をつくって、肩や腕で投球を調整する」
インナーマッスルを鍛えるトレーニングとして、藤田トレーナーが勧めるメニューはゴムチューブを使うものが多い。
例えば、チューブの端を練習パートナーに持ってもらったり、柱にくくりつけたりして固定する。「小さく前へならえ」をする形で肘を90度に曲げて反対側の端を握り、脇を閉めて肘を外側に開くようにチューブを引っ張る。同じように今度は内側にチューブを引っ張る。それぞれ10回ほど繰り返し、筋肉の奥の方が熱くなるように刺激を入れていく。
次に、テークバックを意識したメニュー。右投げの場合はチューブの端を右足で踏み、もう一方の端を右手で握る。右肘が右肩と同じ高さになるようにチューブを真横に上げ、インナーマッスルを強化していく。藤田トレーナーは「負荷を感じないからといって力いっぱいチューブを引っ張ると、アウターマッスルが働くので、あえて軽い負荷にしてインナーマッスルを鍛えます」と解説する。
投球には腕を使うため、腕を鍛えることで球速アップの効果が期待できる。ただ、藤田トレーナーは「下半身で腕の加速をつくって、肩や腕で投球を調整する」考え方を基本としている。速い球や強い球を投げるには下半身主導のフォームが大切で、腕を力いっぱい振っても意外と球速や球威は出ないと指摘する。インナーマッスルは補助的な役割。「インナーマッスルを鍛えておけば何とかなる」という誤解は解いておきたい。
(間淳 / Jun Aida)
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