動作急ぐだけでは「力が乗らない」 頼れる投手へ…球威の落ちない“5種類クイック”

埼玉・越谷市で野球塾を運営する寺村友和氏(左)【写真:間淳】
埼玉・越谷市で野球塾を運営する寺村友和氏(左)【写真:間淳】

足の上げ方だけで5種類…元ロッテ・寺村友和氏が実演、投手個々に合うクイック

 体形や体の使い方が違えば、理想のクイックも異なる。元ロッテ投手で、現在は小学生らに野球を指導している寺村友和さんは、足の上げ方だけでも5種類のクイックモーション(以下、クイック)を選手に提案している。個々に合った形が見つかれば、クイックで球威が落ちたり、制球が不安定になったりする悩み解決につながる。

 寺村さんはロッテ、ヤクルト、近鉄でプレーし、現役引退後は小学生から社会人まで幅広く指導している。現在は、埼玉・越谷市で野球塾を開校している。指導を求める選手の中には、クイックに悩む投手もいる。寺村さんは「クイックは小さな動きで大きな力を生み出す必要があります。投球フォームを見たり、複数の方法を試したりして、選手に合ったやり方を見つけています」と話す。

 まず、投球に入る際のグラブの位置は3通り提案する。へその前でセットする形がオーソドックスで、右投手であれば右腕を下ろしてから上げていく動きがスムーズにいく選手が多い。

 ただ、投手によっては違和感があったり、球速や制球力が落ちたりするケースもある。その時は、胸の位置や顔の前にグラブを構える方法も選択肢となる。寺村さんは、どの形でも、構えた時のグラブを少し二塁側に寄せるよう選手にアドバイスする。セットしたグラブの位置から右腕を下ろすスピードが速く、軸足に体重を乗せやすいという。

 そして、足の上げ方には主に5種類のパターンがある。右投手の場合、まずは、【1】半円を描くように左足をステップする投げ方。最も一般的だが、寺村さんは「体が横に流れたり、前に倒れたりするタイプの投手は使いづらいかもしれません」と説明する。その場合は、【2】左足のかかとでお尻を蹴ってステップする方法を勧めている。

 さらに、【3】両膝の力を瞬間的に抜いてから左足を上げるフォーム。その他、【4】左足のつま先で真上を蹴るように足を上げる方法、【5】左足のかかとを右足のかかとに寄せてから踏み出す方法を挙げる。どのパターンも動きは異なるが、共通点があると寺村さんは話す。

「どんなフォームでも、しっかりと軸足に体重を乗せてから、踏み出す足に体重移動することが大切です。クイックは動きを素早くして走者を自由にさせない目的があります。ただ、動作を急ぐ意識ばかりが強くなり、力が乗っていない球になってしまえば、打たれてピンチは広がります」

 筋力が強いプロには、上半身を使ったクイックでも球速や球威が落ちない投手もいるという。だが、寺村さんは「まだ体が出来上っていないジュニア世代の投手には、軸足に体重を乗せたクイックを身に付けてほしい」と強調する。走者を背負ってから失点しない投手は、指導者やチームメートから信頼される条件と言える。そのために、クイックは不可欠な技術となる。

(間淳 / Jun Aida)

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