華麗な守備への第1歩は「捕れなくていい」 “執着心強い子”に伝えるゴロ捕球の形

捕ることへの“執着心”の強い小学生にゴロ捕球を教える手順とは【写真:生島氏提供】
捕ることへの“執着心”の強い小学生にゴロ捕球を教える手順とは【写真:生島氏提供】

内野手にとって大切な捕球姿勢を大阪桐蔭OB・生島峰至氏が解説

 飛んでくるゴロを的確に捕り、素早くさばける華麗な内野手を目指したい。そんな子どもへの指導に大切なことは何だろうか。小学生の段階で悪いクセがついてしまうと、中学以降で修正がしにくくなる。ベースボールアドバイザーとして主に小学生の指導にあたる生島峰至(いくしま・たかし)さんは、「ステップ1回で強く、正確なスローイングをするためにも、まずは正しい捕球姿勢が大事」と語る。

 大阪桐蔭高では、高校通算33本塁打の強打の外野手として2度甲子園に出場し、その後、同志社大、西濃運輸とアマ球界の第一線を歩んできた生島さんは、現在、自身の知識と経験を子どもたちに伝えていこうと、大阪、名古屋、三重・四日市を拠点に「BT野球スクール」を運営するなどの活動をしている。

 あらゆる野球の動作指導において大切にしているのは、“形と順番”だ。時には日常生活の動作に置き換えて説明するなど、「感覚だけで話さず、できるだけ噛み砕いて説明する」ことを心がける。

 内野守備の捕球動作を教える際も、打球を捕る“形”をまず重視する。1回のステップで強く正確なスローイングをするためには、何よりも正しい捕球姿勢が大切だと考えるからだ。特に低学年の選手には形を優先して教え、そこからスローイングまでの“順番”を習得させていく。

「小学校低学年は、とにかく“ボールを捕ることへの執着心”が強いので、ノックをしても、前から来る打球を手だけで捕りに行ってしまうことがよくあります。そうすると適切な形を作れず、良いスローイングにつながりません。初めは捕れなくても、ボールを落としてもよいので、とにかく打球に対して良い形を作るようにしようと、選手たちには伝えています」

ベースボールアドバイザーの生島峰至氏【写真:伊藤賢汰】
ベースボールアドバイザーの生島峰至氏【写真:伊藤賢汰】

捕球位置は「右の骨盤の前辺り」が理想…口に出すことで深まる理解

 それを踏まえて、生島さんは捕球姿勢について、次のように詳細に説明する。

・軸足となる右足のつま先は、打球方向に対してやや外(三塁側)に開く。打球方向へ真っすぐだと、捕球のために屈んだ際に右膝が内側に折れて、一塁方向に体が流れてしまう。

・一塁方向に開いた左足は、右足よりも靴一足分、前の位置に出す。その方がスローイングの際に、体をねじる横幅を作れて勢いをつけられる。

・左足のつま先は上に向ける。捕球の際に体が一塁方向に流れないようにするためと、スローイングの際、そのままつま先を下げて踏み込むことで一塁方向への勢いをつけられる。

・捕球時はお尻を下げ過ぎず、後ろに引いてやや上に向ける意識をもつ。そうすると自然にグラブの位置が下がり、股関節も畳まれ過ぎず、スムーズにスローイング動作に移れる。

 これらを踏まえ、捕球位置は「体の左側、真ん中、右側と、いろんな意見がありますが、僕は軸足となる右足の骨盤の前辺りで捕るように伝えています」と言う。

 守備に限らず投打の動作についても、より子どもたちに理解させ、定着させる方法として、「選手たち自身に説明してもらうこと」を生島さんは推奨する。

「私のスクールでも、普段から自分たちの練習していることを、どんどん話そうと言っています。体験に来た子にも、『この基本ドリルは、こういうところを意識するんだよ』と選手たちから説明してくれます。特に大阪の子たちは土地柄か、本当によく話をしますね(笑)」

 相手に伝えるということは、理解していなければできないこと。もし間違っていたとしても、互いに指摘し合い、補足し合うことで、確認にもなるし理解もより深められる。

 野球を長く続けるためにも、守備力が最も大切だと考える生島さんは、「基本も応用も、自分で説明できるところになるまで取り組んで、中学、高校へと進んでほしい。コミュニケーション能力は、野球以外にも生きていきますから」と語る。野球の原石を輝かせる鍵は、体を動かす技術以外にもある。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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