小学校にボールもない…元プロの危機感 “興味持つ子”増やす「大谷グラブ」の使い道
元ヤクルト・秋吉亮さんが小学校でキャッチボール授業、柔らかい球を寄付
「大谷グラブ」を有効活用するモデルケースとなるかもしれない。ヤクルトや日本ハムなどで投手として活躍し、2017年WBC日本代表にも選出された秋吉亮さんが、4月30日、東京都港区立本村小学校の6年生66人に対し、講演とキャッチボール授業を行った。
昨年限りで現役を離れ、現在は野球教室などを中心に活動している秋吉さん。小学校への訪問授業は今回で3校目になる。活用したのは、大谷翔平選投手(ドジャース)が昨年末から全国の小学校約2万校に各3個(右用2個、左用1個)ずつ、計6万個配布したグラブだ。本村小にも届いた“プレゼント”を全員が使用し、キャッチボールやゴロ捕球を行った。
「うまい!」「ナイスボール!」「それでいいよ!」。秋吉さんが称賛の声を上げると、初めは緊張していた児童たちの顔にも自然と笑みがこぼれる。
「最初の講演はみんな硬い感じなんですけど、体を動かすと元気に笑顔でやってくれるので、すごくいいですよね。野球人口が減っていると言われていて、野球が好きで始めてくれる子が多くなったらいいなと思って、今回こういう活動を始めました」
「大谷グラブ」の使い道に悩む学校は多い。運動場でキャッチボールが禁止されている学校もあったり、校内に飾られているだけのケースもある。そして、秋吉さんが以前訪問した小学校には、そもそも「ボールがなかった」という。
そこで、軟式球などのスポーツ用品も製作している内外ゴム株式会社の協力の下、キャッチボール専用球「ゆうボール」を寄付することにした。硬式球と同じデザインで縫い目もありながら柔らかく、重量も100グラムほどと軽いため、グラブも傷みにくく、体に当たっても怪我をする心配がない。
「大谷グラブ」を有効活用して楽しさを伝授…「飾っているだけじゃもったいない」
初めてボールに触れる子どもたちも、秋吉さんの投げたボールを「大谷グラブ」でしっかりとキャッチし、思い切り投げ返す姿が随所で見られた。
「大谷君が『野球しようぜ!』と言っているのに、グラブを飾っているだけじゃもったいないですよね。だから、タイミング的にも(このような普及活動が)一番いいのかなと思っています」
キャッチボール授業に先だって行われた講演では、子どもたちへ「夢に向かって諦めないで頑張る」ことの大切さを熱弁。そして「野球を教えた子どもたちがプロ野球選手になってくれたらうれしいです」と新たな夢を語った。そのためにも、「大谷グラブ」を活用して、まずは野球に興味を持つ子を増やすことが大切になる。
「回った小学校はまだ2万分の3ですからね(笑)。これを機に、呼んでいただける学校があればうれしいですし、都内だけではなく、今後は地方にも行きたいです。同じような活動をしようというプロのOBの方が出てくれば、子どもたちにとってもいいですよね」
秋吉さんは、自身をプロまで育ててくれた野球への恩返しも込め、1人でも多くの子どもたちにその楽しさを伝えていく。
◎アスリート学校訪問に関するお問い合わせや協賛は、株式会社PACE Tokyo(playball@pacetokyo.com)までメールでお問い合わせください。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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