球速アップに欠かせない“回転の強さ” 151キロ右腕の秘訣…腕振りだけでは「限界ある」

右横手投げで活躍した秋吉亮さん(ソフトバンク時代)【写真:上杉あずさ】
右横手投げで活躍した秋吉亮さん(ソフトバンク時代)【写真:上杉あずさ】

“でんでん太鼓投法”でプロ381登板…秋吉亮さんが勧める「内転筋トレーニング」

 日本では野球を始める際、投手、野手に限らず、上から投げることを強く勧められる。しかし、「横からの方が投げやすい」という投手がいた場合、指導者の多くがオーバースローで育ってきたため、どこから手をつければいいかわからないケースも多いのではないだろうか。何に気をつけて練習をすればいいのか。右サイドから最速151キロを投げ込み、ヤクルト、日本ハム、ソフトバンクでリリーフとして活躍した秋吉亮さんが、ヒントをくれた。

 秋吉さんは、東京都立足立新田高1年まで、主に捕手や二塁手として活躍していた。転機は2年春。二塁守備で横から投げる姿を見ていた監督から、サイドスローでの投手転向を言い渡された。

 まずは、日米通算313セーブの名守護神・高津臣吾さん(現ヤクルト監督)のアンダースローを参考にフォームを作り、腕の高さを微調整していきながら「一番力が入る」スリークオーターよりやや下の位置に落ち着いた。

「昔は本当に腕を振ることばかり意識していましたが、でも、腕を振るのには限界があります。そう考えた時に、お尻や足の方が筋肉は大きいので、その力を使いながら腕を振っていく練習をやりました。ベンチプレスをやると、腕は太くなるけれど、肩が回らなくなります。関節や肩甲骨の柔らかさを追求してやるようにしました」

 下半身の筋力と上半身の柔軟性を意識し、高3で139キロだった直球の最速も、中央学院大で146キロ、パナソニック時代には149キロまでアップ。2013年ドラフトでヤクルトから3位指名を受け、プロ入りの夢を果たし、2017年WBC日本代表に選出されるまでに成長を遂げた。

小学校でキャッチボール指導を行う秋吉さん【写真:内田勝治】
小学校でキャッチボール指導を行う秋吉さん【写真:内田勝治】

捕球体勢を維持したまま連続キャッチ…多種多様なメニューで強化

 その秋吉さんが、特にサイド投手に向けて勧めるのは、内転筋(太もも内側の筋肉)のトレーニングだ。

 ウエートマシンで鍛えるほか、スライドボード上をスピードスケート選手のように滑走したり、捕球体勢をとったまま、前から転がしてもらったボールを連続でキャッチするなど、太ももの内側を意識できる多種多様なメニューで鍛えた。秋吉さんは、投球時にグラブを持つ左腕を巻き込まず、一塁側へ開きながら投げる「でんでん太鼓投法」で知られたが、その特徴的な投法は強靱な下半身なしでは生まれなかった。

「体を回す時に、(ステップした)左足に右足をぶつける感じで投げるんですけど、内転筋の力が弱いと回転が弱くなって、ボールの勢いも弱くなります。プロでも一度肉離れをしたことがあるので、結構鍛えましたね」

 NPBで9年、通算381試合に登板。サイドで酷使した代償として、右肩甲骨は左に比べて下がっている。それでも、整体などでバランスを整えたことはないという。

「逆に元の位置に戻ったら、投げ方がおかしくなるんじゃないかと(笑)。サイドスローでできあがったのが今の体なので、もうこのままでいいんじゃないかと思っています」

 高2からサイドスロー一筋で貫き通してきた経験を、今後は野球教室などを通して還元していく。

「小学生からサイドスローにしても自分はいいと思います。ただ、独自でやると、肘が下がって投げるので、どうしても怪我をしやすくなります。しっかりと投げ方を指導できる人がいるのなら、やってもいいんじゃないかと思いますね」

 固定観念にとらわれず、様々なことを試しながら、自分に合ったスタイルを見つけていく。そうして活路を見いだしてきた秋吉さんだからこそ、言葉には説得力がある。

◎アスリート学校訪問に関するお問い合わせや協賛は、株式会社PACE Tokyo(playball@pacetokyo.com)までメールでお問い合わせください。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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