子どもの体を「大きくする」食事術 プロの母も抱えた焦り…無駄にしたくない“限定期間”

管理栄養士の渡邊元美さん【写真:樫本ゆき】
管理栄養士の渡邊元美さん【写真:樫本ゆき】

管理栄養士・渡邊元美さんが解説…体を大きくするために小・中学生からできること

「体を大きくしたい」と願うジュニア選手は多く、小・中学生からの“食トレ”も、よく話題にのぼるようになった。バットスイングの力を高めたい、より速いボールを投げたい、体格に恵まれたプロ野球選手に憧れてパワーをつけたい……などと願う選手や、なんとか子どもの成長を手助けしたいと考える保護者も多い。そこで、具体的にどのような食事をとれば体が大きくなり、どのような注意点があるのか。管理栄養士の渡邊元美さんに話を聞いた。

 渡邊さんは、父・元智さんが監督を務めていた名門・横浜高校野球部の元寮母で、息子は楽天に所属する渡邊佳明内野手。野球選手を食事面からサポートしてきた経験を活かし、現在は学生アスリートの体づくりサポート活動を行っている。

「結論から言えば、食べる量が動く量より上回っていれば、体を大きくすることができます」

 数多くのアスリートを見てきた渡邊さんだが、やはり第一に「食べなくてはならない」という。

「小学生や中学生は成長期です。大人と違い、成長するためにたくさんのエネルギーを使います。しかも、少年野球に限らず、たくさん運動した場合にはさらにエネルギーを消費します。体を大きくしたいのなら、それ以上にエネルギーを補給する、つまりたくさん食べる必要があります」

 食べているのに大きくならない、そんな声もある。「食べているつもりでも量が足りなかったり、菓子パンや甘いジュースでお腹を満たしていたり、朝食自体を抜いていたりすることも、意外と多いです」と話しつつ、「とはいえ、小学生くらいだとそもそも内臓系の成長もまだ追いついていなくて、一度にたくさん食べられない子は少なくありません」とも語る。では、どうすればよいのだろうか。

「お勧めする栄養のとり方は“補食”です。読んで字のごとく、食事を“補う”方法のことで、1日に必要なエネルギーを基本の3食以外で5~6回に分けて食べます。いわゆる“分食”です」

味のりを巻いた一口サイズのおにぎり【写真:渡邊元美さん提供】
味のりを巻いた一口サイズのおにぎり【写真:渡邊元美さん提供】

補食は食事の一環…できるだけ栄養価の高い具材を食べよう

 合間に食べると聞くと、間食、いわゆる“おやつ”のイメージが浮かぶが、補食は不足したエネルギーや栄養素を補うための、あくまで“食事の一環”と考える。

「だから嗜好品ではなく、なるべく栄養価の高いものを選びましょう。例えば、おにぎりやサンドイッチ。サンドイッチも、できればジャムサンドではなく、ハムやチーズ、卵を具にしたものがいいですね」

 共働き家庭が増えた今は、補食も加わると、なかなか支度も大変だ。

「私も働く母親の一人としてたどってきた道なのでわかります。本当に子育て中は、時間に追われて大変です。でもこの成長期は“期間限定”で、終わってしまったら二度と訪れませんから、できるだけ栄養価の高いおにぎりやサンドイッチを用意してあげてください。もちろん、できないときだってあります。そんな時でも、お菓子ではなく、コーンフレークに牛乳をかけたり魚肉ソーセージなどを上手に使ってみたりしましょう」

 子どもも大人と同様、疲れてくると甘いものを欲しがることも多い。そういう時も、お菓子ではなく、ヨーグルトにハチミツをかけるとか、ちょっとした工夫をしてみる。

「おやつや嗜好品を、絶対に食べてはいけないということではありませんが、欲望のままにジュースやチョコなどでお腹を満たしてしまうと、肝心の食事で栄養がとれなくなってしまいます。ですから、お菓子は習慣にせず、どんな時に食べるのか、ある程度決まり事を作るのもよい方法かもしれません」

楽天・渡邊佳明【写真:小池義弘】
楽天・渡邊佳明【写真:小池義弘】

「自分の体を作るのは自分である」と教えよう

 合間に食べるものも食事の一環として捉えることが大事であると同時に、食に対する意識を子どもに伝えることも重要だと渡邊さんは続けた。

「漠然と食事をするのではなく、今、自分が口にしているものでしか、自分の体がつくられないということを教えてあげましょう」

 栄養素の細かいことはわからなくても、なぜ食べなければいけないのか、理屈を知ることが重要だと指摘する。自分の体を作るのは自分自身であり、口にしているものも、自分の意志で体の中に入れていることを自覚できるように導きたい。

「本当に体を大きくしたい強い意志があるなら、1日に使うエネルギーより多く食べることが必要なのだと理解すれば、いっぺんに食べられなくても、食事の間にも栄養のあるものを少しでも食べようと努力するようになるでしょう」

 何を、どのように食べるのかを、子どもたち自身の意思で選択できるようになるのが目標だ。それは、アスリートとして必要なスキルでもある。補食=分食はすぐに始められるので、まず試してみてほしい。

 渡邊さんは「母としての気持ち」をこう振り返った。

「息子(佳明選手)は小さい頃、同級生と並ぶとガクンと背が低くて、体も細かったんです。だからもっと食べさせなくてはと、常に焦っていました。保護者の方々の心配も本当によくわかります。だからこそ、補食で無理なく、成長に十分なエネルギーと栄養をとれるようにお子さんを導いてほしいですね」

 まずは冷蔵庫にある身近な食品を使って、栄養価のある、おにぎりやサンドイッチを作ることから始めてみませんか?

(大橋礼 / Rei Ohashi)

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