子どもに難しい“投げ方”…簡単に教える方法は? 元プロが自信持つ「動作の例え方」
元ロッテ・里崎智也さんが野球教室&トークショー「簡単に伝えるのが僕らの使命」
一流の教えは、至ってシンプルだ。元ロッテの里崎智也さんが今月19日、東京・品川区の「LOCOKウェルネスガーデン品川御殿山」で、小学1年生~4年生20人を対象とした野球教室とトークショーに参加した。お待ちかねの野球指導は、まずは打撃から。里崎さんがバットを手に、子どもたちへ質問する。
「打ちにいく時に一番力を入れなきゃいけないところはどこだと思う?」
「手!」「足!」。子どもたちから思い思いの声が上がる。6年連続2桁本塁打をマークするなど、プロ16年間で通算108本塁打を放った「打てる捕手」が導き出した答えは、単純明快だ。
「両足の親指の付け根辺りに力を入れて構えてみよう。親指に力を入れたら、右バッターなら、左の肩から右の肩まで、顎がつくくらいしっかり振ってみよう」
特別な技術指導はしていない。伝えたのは、両足の親指付け根に力を入れることと、バットの振り始めと振り終わりに顎を肩につけること。この2つのみだ。里崎さんがその意図を説明する。
「誰にでも簡単にできることは、簡単に伝えるのが僕らの使命だと思っています。土台だけしっかりしておけば、振ることは誰にでもできます。下(下半身)がバラつくから、上(上半身)もバラついちゃうんです。両足の親指に力を入れない人はいないじゃないですか。だから、そこに力を入れるのが一番わかりやすく、日常でも意識しやすいんです」
正座での食事で養った股関節や足首の柔軟性「やり続けることの大切さはある」
投げ方の指導も特徴的だ。ここでは、わかりやすい例えで子どもたちの興味を引く。
「投げる時に一番大事なのは、ボールを持っている方の腕をしっかり振ることだけれど、ボールを持っていない腕も、しっかり肩まで水平に上げること。『ヤジロベエ』みたいな感じだね。そして、(ボールを持っている手で)ボールを持っていないほうの手を叩くように投げる。足も大事なので、(右投げであれば)体重を『左、右、左』と乗せて投げれば、遠くに速く投げられる。それができるようになったら、『右』の時に『かかし』みたいに左足を上げてみよう」
投球の一連の動作はイメージできなくても、「ヤジロベエ」や「かかし」の姿形であれば、パッと頭に思い浮かぶ子も多いだろう。ここにも、里崎さんの指導への熱い思いが見て取れる。
「どんなに良いことを言っても、伝わらないと1ミリも意味がないので。子どもたちがイメージして取り組めることを、どう伝えればわかりやすいのかを考えた時に、『ヤジロベエ』や『かかし』を使うと理解してもらいやすいです。投げ方教室でも、すぐに理解して実践してくれるので、これは伝わるなと。投げられない子でも、そこそこ投げられるようにする自信はあります」
トークショーでは、徳島県で生まれ育った18年間、毎日ちゃぶ台に向かって正座で食事をしたことが、捕手として重要な股関節や足首の柔軟性につながったというエピソードも披露した。
「子どもの時からそれを何十年とやり続けると、結果はめちゃくちゃ変わります。自然に当たり前のことをやり続けることの大切さはあるのかなと思います」
引き出しの多い一流プロが辿り着いたシンプルな教えは、簡単にできるからこそ、継続できる。里崎さんは、今後もわかりやすい指導で、子どもたちの可能性を引き出していく。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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