大谷翔平は190キロ…“打球速度”向上は「安打の確率に直結」 プロ注目主砲の意識変換
自己最速、打球速度170キロをマークした大商大・渡部聖弥…力以上にキレ重視の取り組み
打球速度を上げるために、大学トップレベルの選手が取り組んでいることは至ってシンプルだ。22~24日に神奈川県平塚市で行われた、侍ジャパン大学代表の選考合宿に参加した今秋ドラフト候補・渡部聖弥外野手(4年=大商大)は、合宿中に行われた打球速度を測定しながらのフリー打撃で、野手25人中トップとなる170キロをマークした。
自己ベストを1キロ更新し「うれしいことはうれしいんですけど……」と浮かべた照れ笑いは、すぐに引き締まった表情へと切り替わる。「ここで終わりではなく、上のステージで野球をしたいと思っているので、満足せずにどんどん上を目指して行きたいです」。
2年秋には関西六大学連盟新記録となるシーズン5本塁打をマークした右の長距離砲。3年までは「体を大きくすること」をテーマに、重い重量で鍛え上げ、身長177センチ、体重88キロと筋骨隆々の肉体を作り上げた。ただ、4年になり、意識が変わった。
「重いものでウエートトレーニングをするのではなくて、軽いもので体のキレを出す。重いバットで振るのではなくて、軽いバットで体に速い動きを覚えてもらう。体のキレを求めてやってきました」
軽いバットでスイングを繰り返すことで速筋(瞬発的な運動に使われる筋肉)が鍛えられ、スイング速度が増す。それに比例して打球速度も上がる。大学よりもワンランク上のステージを見据えての決断だ。大谷翔平投手(ドジャース)が約190キロ、村上宗隆(ヤクルト)が約185キロとも言われる打球速度にどこまで迫れるかが、プロで活躍する上での指針となる。
「150キロ台後半を安定して出せていたところが成長」
現在地を知るためにも、7月に開催されるプラハベースボールウイーク及びハーレムベースボールウイークは、絶好の腕試しの場となる。フリーでは打撃投手を通常より前にして海外勢の直球対策を行った。独特のクイックモーション、そして160キロ近い直球に対応するために、より高いスイング速度は欠かすことができない。その中でチーム1の打球速度を叩き出し、柵越えも放ったことに手応えを感じている。
「(昨年日米大学野球を経験して)米国は大きい投手が多くて、めちゃくちゃ近く見えたりします。モーションも速いので、差し込まれることも多い。今日のように近い距離でバッティングをするということは凄く大事だなと思いました」
投球の勢いが使えないティー打撃でも、160キロを超える打球速度をマーク。堀井哲也監督(慶大監督)も「渡部くんは去年から打線の中心。国際大会は強いスイングがバッターに関しては必要になるので、打球速度は1つの参考になる」と評価した。渡部も主軸としての自覚をのぞかせる。
「前だと高い数値も低い数値もあったんですけど、150キロ台後半を安定して出せていたところが成長です。そういう数字も、ヒットになる確率に直結してきます。データの野球も進んできているので、気にしながらやっていきたいなと思っています」
タフさが要求される国際大会へ向け、合宿では早朝4時15分からミーティングが行われたが、「大商大出身で鍛えられているので、そういう面ではタフさはあると思います」と笑い飛ばす余裕も見せた。圧倒的な打棒で世界を驚かせる準備はできている。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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