「できないことを怒っても効果なし」 育む共通認識…野球の入り口作る“脱・昭和指導”
強豪ゆえのイメージ払拭…常磐軟式野球スポーツ少年団の“褒める”指導
近年は少子化も相まって、少年野球の競技人口減少に歯止めがかからない状況が続いている。それは強豪と呼ばれるチームも例外ではない。福島・いわき市の少年野球チーム「常磐軟式野球スポーツ少年団」は、創部41年で35度の全国大会出場、4度の全国制覇を誇る強豪学童。それゆえに「練習が厳しい」イメージがつき、部員集めに苦労した時期もあったという。そんな中、未就学児~小学3年生で構成される同チームのカテゴリー「常磐キッズ」の指導者は、門戸を広げるための雰囲気づくりに努めている。
常磐キッズの村田繁人監督は、「このチームに“昭和的”な指導をする指導者はいません。できなくても怒らずに、なぜできないか、できるようにするためには何をすればいいかを子どもたちと考えるようにしています」と力を込める。トップチームを含む組織のスローガンは「継続は力」。目標に到達するまでの道のりを、選手と指導者で手を取り合って着実に歩む。
「監督、コーチがうまくできない選手を怒らないのは、『できないことを怒っても効果がない』という共通認識があるから。それぞれが我が子を育てたり、その同級生と接したりする中で、この世代はまだまだ未熟で、頭ごなしに怒っても野球は上手くならないと気づいているからだと思います」
同時に気にかけているのが、「子どもの顔」だ。中には練習中にミスを繰り返して涙を流す選手もいる。そんな時こそ褒めるポイントを探してポジティブな言葉をかけ、1人1人の「前向きな表情」を引き出すよう心がけている。
“野球以外”のトレーニングで初心者も「入りやすい」雰囲気をつくる
運動能力向上を目的に取り入れているリズムトレーニングや、遊具を使ったトレーニングも、雰囲気づくりの一環。村田監督は「この年代は団員を増やしていかないといけない。最初から『野球をやろうよ』と言って始めさせるのではなく、和やかな雰囲気でできるトレーニングの時間を設けることで、入団体験に来た子どもがすんなり入ってこられるようにしています」と話す。
入団を決めた選手の保護者からは、「リズムトレーニングをやってほかの選手とすぐに打ち解けることができたので、入りやすかった」という声が多く寄せられるという。実際に、取材日も体験で参加した児童が自然と選手の輪に入り、終始笑顔を見せていた。野球の練習以外の「入り口」を設けるのは、門戸を広げるのに効果的な策だ。
「常磐のチーム目標は全国大会で勝つこと。勝負にこだわると、どうしても厳しい言葉で負荷をかけないと強くならないという考えになるんですけど、この(キッズの)世代は基本的には前向きな気持ちを育てたいと思っています」
チームを強くするためには、怒声・罵声は排除しつつ、選手に「厳しさ」を課すことも時には必要になる。しかし、チームを強くする以前に、子どもたちをどう“スタート地点”に立たせるか、その手腕も求められる時代になっている。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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