小学生を襲った“ゲリラ豪雨” 継続試合で負担増…遠征組の労苦「かなり疲れ見えた」
全日本学童で“ダブルヘッダー”…地元・不動パイレーツ「愛知開催なら負けていた」
猛暑かと思いきや、突如襲いかかる豪雨……。夏場の気象条件が厳しくなる昨今、大会日程の組み方も難しさが増しているようにみえる。悪天候などで試合が中断された場合に、翌日以降に中断された場面から再開する「継続試合」。22日に決勝が行われた学童野球チームの全国大会「高円宮賜杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」では、3回戦2試合で継続試合が適用された。各チーム、どのような対策をして中断翌日の試合に臨んだのか。そして、その後への影響とは――。
大会3日目の19日、台風7号接近により初日が順延となった影響で日程・会場の変更が生じ、東京都内の「4会場で2試合ずつ」実施する予定だった3回戦が、「2会場で4試合ずつ」実施された。
しかし、“朝夕2部制”のナイターで行われた第4試合は、ゲリラ豪雨に見舞われて最後まで消化できず。翌20日、いずれも19日とは別会場に移動して、準々決勝前の午前8時台から継続試合を実施した。勝利した不動パイレーツ(東京第2)と牧野ジュニアーズ(奈良)は、この日ダブルヘッダーで準々決勝も戦い、ともに勝ち進んで翌21日の準決勝に臨んだ。
不動パイレーツの鎌瀬慎吾監督は、21日の準決勝で新家スターズ(大阪)に敗れた直後、「ウチの体力負け。継続試合もあって体にかなりの負担がかかっていた。(選手は)朝の時点で体が重たくて、気力でグラウンドに立っている感じがありました」とこぼした。
19日は継続試合が決まって午後8時頃に球場を後にし、各選手が帰宅。急遽、保護者に連絡網を回し、水風呂に入れたり、消化の良い食べ物を食べさせたりして選手の体力を回復させるよう依頼した。これらの対策は、インターネットで調べた情報や大会前に受けた栄養指導を参考にしたもの。対策が実り、翌日の北名古屋ドリームス(愛知)との継続試合は9回までもつれるタイブレークの激戦を制し、続く準々決勝も快勝した。
「北名古屋さんとは家に帰れたか、ホテルに戻ったかの差。もし愛知開催だったらウチが負けていたと思う」と鎌瀬監督。“現地組”と“遠征組”には継続試合の備え方に大きな差があったようだ。
“遠征組”は対策が困難…保護者が夜間にコインランドリーで洗濯も
同じく準決勝で敗退した牧野ジュニアーズの田中章夫監督は、「昨日の2試合目が体力のピークでした。ピッチャーをはじめ、かなり疲れが見えていた」と明かした。前日は継続試合を戦いきり、準々決勝は70球の投球制限や投手陣の疲労を考慮しながら、3選手で小刻みに継投して勝利。試合後は休養に徹したが、完全には疲れが抜けなかった。
継続試合が決まった19日は、試合会場の町田市の球場から、午後9時過ぎに品川区のホテルに到着。食事、入浴を済ませて、できる限り早めに就寝させたものの、翌朝は体調が優れない選手も少なくなかったという。
継続試合で牧野ジュニアーズに敗れた東郷ヤンチャーズ(福井)も“遠征組”。こちらも19日はホテルに戻ったのが午後9時半頃で、体力回復に向けた特別な対策はできないまま、午後11時頃に就寝。翌朝は午前5時頃に起床した。また、保護者は夜間にホテルからやや離れたコインランドリーでユニホームの洗濯をし、翌日の試合に備えた。自宅で過ごせない“遠征組”には十分な対策の余地がないのが現状だ。
大会には休養日がない上、初日の順延で予備日も費やされていた。試合の午前・夕方実施は熱中症対策のためだが、それが思わぬ“過密スケジュール”につながったともいえる。東郷ヤンチャーズの竹内浩二監督は「これだけ準備をしてもらっているので、こちらから意見を言うつもりは毛頭ない。日程に合わせるしかないと思う」。不動パイレーツの鎌瀬監督は「『こうせざるを得ない』という苦労はわかりますし、納得しています。日程にどう対応してチームをつくるかが重要」と話す。
日程への対応も実力をはかる1つの指標だ。ただ、不安定さが増す夏場の気象条件を鑑みれば、日程の組み方は、東京固定開催でなくなる来年以降も課題として残ることとなるだろう。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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