小学生に口説き文句「甲子園でやれる」 野球離れ阻止効果も…“中学5団体激突”の財産

「2ndエイジェックカップ」で優勝したポニー筑後リバース【写真:早浪章宏】
「2ndエイジェックカップ」で優勝したポニー筑後リバース【写真:早浪章宏】

中学硬式5団体王者の頂上決戦はポニー連覇…甲子園決勝がもたらす好影響

 中学硬式野球5リーグの覇者が“真の日本一”の座をかけて戦う「2ndエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」の決勝が8日、阪神甲子園球場で行われ、ポニーリーグ代表の「ポニー筑後リバース」(福岡)が延長9回タイブレークの末、ボーイズリーグ代表の「宮城仙北ボーイズ」を3-2で下して優勝を果たした。初開催だった昨年大会を制した「ポニー佐賀ビクトリー」に続く、ポニーリーグ代表の連覇で幕を閉じた。

 今年で2回目を迎え、中学硬式野球界の“垣根を越えた”発展を目標に掲げているこの頂上決戦。球児たちを取り巻く環境にどのような変化を起こしているのだろうか。そこには、決勝戦を聖地・甲子園で戦うことができる影響の大きさもある。

 優勝したポニー筑後リバースの入部英徳監督は、次のように選手たちに説いていたことを明かす。「とにかくこの甲子園を楽しめるかどうか。でも、練習のときから自分にいろんな課題を課して、反復練習して、一生懸命やった人が楽しめる場所であって、何もやらずにここに来る人はビビるだけだよ」。高校野球という次のステージでも必要になる心構えだ。

 中学生の段階で甲子園を経験できれば、高校入学後も、憧れの舞台をより鮮明にイメージしながら練習できる。再び聖地に戻ってこられた時に、極度の緊張状態に陥らずにいられたり、中学時代の経験が自信になったりと、アドバンテージになる点は多いだろう。

 昨年同大会が初開催されるまでは、関西の中学硬式No.1決定戦「タイガースカップ」への出場資格がある関西地方のチームだけが、中学生のうちに聖地でプレーする機会を有していたが、全国にチャンスが生まれたことを各チームの指導者は前向きに評価している。

決勝戦は延長9回タイブレークの熱戦となった【写真:早浪章宏】
決勝戦は延長9回タイブレークの熱戦となった【写真:早浪章宏】

全出場チームがシートノック、懇親会…大会独自の取り組みに「拍手喝采です」

 決勝へ進めなかった3チームにも、甲子園のグラウンドでプレーする機会が設けられた。表彰式前、順番に5分間のシートノックを行うことができたのだ。フレッシュリーグ代表として初出場した「筥崎ジンジャーズ球団」(福岡)の相田謙一監督は、「緊張してボールを捕れない子もいたけれど、ここに立てたことは一生の宝。高校生になってもなかなか来られないですから」と目を細め、「未来ある子どもたちにとって、負けても財産になる大会だった」と振り返った。

 他にも「財産になる」と感じたことがある。フレッシュリーグが九州地方のチームだけで構成されていることに触れ、「この大会は他リーグと試合ができますし、夜は懇親会があります。選手たちが円卓にミックスで座って、食事をしながら交流する機会もあるんです」と、少し驚いた様子で語った。

 地域やリーグの垣根を越えて刺激を受けることで、球児たちの今後の成長が期待できる。このような取り組みは全国大会でも珍しく、相田監督は「拍手喝采です。これからも続けてもらいたい」と願っていた。

 また、同チームでは小学生を勧誘する際の“口説き文句”が変わってきたという。同大会を、中学硬式野球の最高峰とされている「全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップ」(毎年8月・東京ドーム)に並ぶ新たな目標として捉えており、「勝ち上がれば中学生のうちから甲子園でやれるよ」と伝えるようになった。

 スポーツを本格的に始める年頃から、身近に“甲子園”という「大きな夢を与える」ことで、野球をしたいと思う子どもが増え、小学校から中学校に上がるタイミングでの離脱を防ぐことができるかもしれない。事実、2021年から夏の決勝を甲子園で行う女子高校野球は競技人口が増加中だ。

「大会主催者や球場、阪神園芸などの関係者が、さらに野球人口増加に加担してもらえると非常にありがたいですよね」と相田監督。”聖地”を舞台にした中学硬式野球5リーグによる新たな全国大会は、球界全体の前進にもつながっていく。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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