中学生で最速140キロ…“雪国の逸材”の球速アップ練習 高校で即動ける「基礎固め」
「雪国は逆境ではない」中学硬式5団体大会準V、宮城仙北ボーイズ右腕が見据える夢
高校野球の聖地に、みちのく育ちの「スーパー中学生」が現れた。中学硬式5リーグの優勝チームが頂点を争う「2ndエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」の決勝が8日、阪神甲子園球場で行われ、ボーイズリーグ代表の「宮城仙北ボーイズ」は延長9回タイブレークの末、ポニーリーグ代表の「ポニー筑後リバース」(福岡)に2-3で敗れたが、先発した最速140キロ右腕・菅原駿投手が投打に躍動した。
菅原はこの試合、2回無死満塁から自らのバットで先制適時打を放つと、投げては5回7奪三振無失点。大会初の決勝タイブレークで敗れはしたが、「普通のチームだったらもう終わっている(引退)ところを、みんなで9月までガチ(本気)で続けられたのが、優勝はできなかったですけど、すごくうれしいです」と振り返った。
修学旅行を終えて大会前日の夜にチームに合流したため、本調子ではなかったという。それでも、182センチの長身から投げ込まれる直球は最速136キロを計測。変化球を交えつつ要所はストレートで勝負し、ポニーの強豪を抑えてみせた。
岩手県出身の菅原は、小学6年のときに東北楽天ジュニアに選出され、選考会で球速125キロをマーク。肩を痛めたため本戦では1試合の登板にとどまったが、中学2年時に137キロまで数字を伸ばし、今夏に140キロを計測した。これからの成長も楽しみな好投手だ。
夏に差が出る「基礎がどれだけ固められるか」…高校を見据えたストレッチも
宮城仙北ボーイズには現在、菅原を含めて8人のさまざまなタイプの投手がいる。これだけ多くを成長させられた理由について、投手育成に定評がある田中伸次監督は、「中学生のうちは骨格がまだ全然しっかりしていませんから、まずは下半身で体重移動の感覚をつかむこと。そのための投球練習を繰り返しやっています」と語る。
週末に試合がある場合は、平日2回の練習では、火曜日に30球、木曜日に40球を目安にしている。体重を移動させる方向へ、選手の腰を手で押してサポートし、理想的な感覚を体にしみ込ませているという。さらに、東北独自の気候も投手育成にうってつけだと語る。
「うちは雪国なものですから、極端な言い方をすると12月から2月までの3か月間、屋外で練習ができません。その間は室内で徹底的に基礎トレーニングをしています。特に投手はそれが生きます。皆さん、雪国はハンデって言いますけど、雪国だからこそ長期的に、基礎練習だけに集中できる。春は勝てませんが、夏になる頃には、基礎がどれだけ固められているかで差が開いてくるものなんです」
同チームのグラウンドには約300坪の敷地にビニールハウス2つが室内練習場としてあり、投球練習ならば1度に6か所のスペースが確保できる。1つは人工芝が敷かれ、もう1つは土のため、さまざまなグラウンドを想定した練習もできる。そこで基礎を固めつつ、入念にストレッチをすることで柔らかい関節をつくっている。
高校で野球を続ける菅原も、「今は可動域を広げる練習をしているので、肩周り、肩甲骨周りを意識しながら、高校に入ってすぐに動ける、筋肉をつけられる体にしています」と先を見据える。そして笑顔で、「次こそは日本一になりたいです」。再び、甲子園のマウンドに立つ日が楽しみだ。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)
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