飛ぶバットの体験で「勘違いも」 打低傾向に危惧…小学生で防ぎたい“手首の癖”

上のレベルにつながる手首の使い方とは(写真はイメージ)
上のレベルにつながる手首の使い方とは(写真はイメージ)

高反発バットによる“強引な打ち方”が身に付くリスク…使用しても「正しい技術を」

 高校生でも球速150キロが当たり前の時代になり、「投高打低」傾向に歯止めがかからない野球界。打者のさらなる技術向上が求められるなか、金属より飛距離が伸びる複合バットの使用には賛否両論が飛び交う。チームや選手には結果を残せる“大きな武器”となるが、指導する側の本音はどうなのか?

 反発力を高めるウレタン素材などを配した複合バットは、2002年頃から登場すると、反発係数は年々向上し飛距離は上がってきた。怪我防止などの安全面から、「NPB12球団ジュニアトーナメント」では2022年から禁止に。学童野球界でも、2025年から少年用を除いて使用が制限される。本塁打を打つ“成功体験”を得ることはできるが、中学や高校と高いレベルで野球を続ける選手にはデメリットもある。

 複合バットは、詰まったとしても驚くほどの飛距離が出てしまう。ほとんどの小学生は変化球が禁止のため、ストレートに照準を合わせるだけでいい。正しいフォームではなく、強引なスイングが目立っている。いわゆる「手首をコネる」打ち方でも、満足できる打球が生まれてしまう。

 広島県東広島市内で「Mac’s Trainer Room」で代表を務める高島誠氏は「技術がなくても結果を残せる。コネても打てるのはバットのおかげ。そこで“助かった”部分が大半なのですが、勘違いしてしまい、子どもの未来を奪う可能性もあります。複合バットを使用しても、しっかりとした技術を身に付けてほしい」と、現在の小学野球界に警鐘を鳴らす。

Mac’s Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】
Mac’s Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】

本物の技術がなければ、生き残れない時代に

 将来を見据えて小学生の段階で身に付けたい技術は様々あるが、高島氏はその1つに「トップハンド(バットを持つ後ろ手)の使い方」を挙げる。

「バットを構えて後ろに引いた時に、トップハンドがコックして(親指側に折れて)バットが倒れます。そこからスイングすれば、手首は自然に回るけれども返る(コネる)ことはありません。手のひらが上を向いた状態から、インパクトの最後にリストターンするのが理想です」

 高島さんは「相手投手は打者のタイミングを外し、崩してくる。過去に比べ球種が増え、打者はよりレベルを上げないといけない時代になっています」と語る。正しい打撃技術を学んでおかなければ、“打低傾向”に拍車がかかりかねない。そのためにも、道具の性能に頼った小手先の打ち方は、早い段階で修正をしておきたい。

 中学に入れば金属、大学では木製と扱うバットはカテゴリーが上がるほど難しくなる。高校野球では低反発バットが採用され、木製バットを使う選手も――。昨今は様々な情報が簡単に得られるが、本物の技術がなければ、生き残れない時代に入っている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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