野球の体験会「楽しくない子もいる」 部員増へ効果大…小学生の興味逃さない“新企画”

伊左座ヤンキースの「リアル野球BAN」体験会【写真:チーム提供】
伊左座ヤンキースの「リアル野球BAN」体験会【写真:チーム提供】

創部50年の福岡・伊左座ヤンキースが“リアル野球BAN”で体験会「あれだけ集まったのは初」

 少子化や野球離れが続く現代において、よほどの強豪チームでない限り、受け身の姿勢では部員数は増えない。アイデアを出し合い、行動することが大切になってくる。福岡県遠賀郡水巻町で活動する学童野球チーム「伊左座(いさざ)ヤンキース」は、今年で創設50年を迎える。半世紀続く伝統あるチームは、今年から新たな試みを行った。6月の体験会を、テレビ番組の人気企画「リアル野球BAN」で行ったところ、20人の子どもたちが集まった。

 リアル野球BANとは文字通り、ボードゲームの「野球盤」を実際のグラウンドで行うもの。基本的に「打つだけ」なので初心者でも楽しみやすい。チームを指揮する豊沢志臣(もとおみ)監督は、その効果に驚きの声を上げる。

「体験会であれだけ集まったのは初めてじゃないですかね。元々はイベント的なものではなく、普通に野球の体験会をやっていたのですが、集まっても大体2、3人、多くて5人ほどでした。体験会の目的は、野球の楽しさに触れてほしいということ。ただ、野球の体験会だと、アウトが取れずに楽しくない子もいると思うので、それだったらリアル野球BANが一番いいんじゃないかと思って、取り入れました」

 内野を囲むように設営されたフェンス前には、安打や二塁打、本塁打、アウトなどが記されたカラーシートが敷かれ、打球が止まった位置で結果が決まる。守備には就かないので、純粋に打つことのみを楽しみながら、大まかなルールを把握できるのがリアル野球BANの利点だ。外野ではマシン打撃やネットスローも体験。その後、5年生2人が入部するなど、イベントは大成功に終わった。

伊左座ヤンキースの豊沢志臣監督【写真:内田勝治】
伊左座ヤンキースの豊沢志臣監督【写真:内田勝治】

監督就任時は部員6人…立て直しへ学童保育への“スカウト”も

 豊沢監督はコーチ時代を含め、今年で指導歴20年。監督歴は17年に及ぶ。伊左座ヤンキースは創設当初から地域のみならず、福岡の強豪チームとして名をはせてきたが、2007年、豊沢監督の就任時は部員数が全学年で6人まで減少していた。まずはチームとして試合ができるように、部員集めからスタートした。

「僕もヤンキース出身なので、強い時のヤンキースしか知らないんですよ。そのチームが衰退していたので、これを復活させるために、近所にチラシを配ったり、体験会も多い時で月に2、3回はやるなど、まずは部員を増やすことに注力しました」

 伊左座小学校の敷地内にある児童クラブ(学童保育)にも積極的に“スカウト”へ出向いた。両親が共働きなどの理由で自宅にいない、放課後の時間帯に小学生を受け入れている施設には、野球に興味を持つ子も少なくない。

「学童で野球をやっている子どもを見たら、『野球は好きなの?』と積極的に話しかけたりしました。ブランコなどの遊具で遊びながら練習を見ている子にも声をかけたりして、比較的早い段階で9人集まりました」

 そうした地道な努力が実を結び、6年後の2013年には“小学生の甲子園”と称される「高円宮賜杯 全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に初出場。全国の舞台で1勝を挙げることができた。挨拶や礼儀、コミュニケーションの取り方など、野球以外の付加価値を多く学べる点も保護者の共感を呼び、今では部員数も28人と、安定して選手が入部するようになった。

「1学年7人が理想ですね。その下の学年2人がスタメンに入って、次の年の核として回れたら一番いいです。体験会もリアル野球BANだけでは飽きられるので、色々と考えながらやっていきたいと思っています」

 まずは子どもたちの興味を引きながら、野球という競技を知ってもらい、楽しんでもらうこと。豊沢監督は現状に満足することなく、次なる一手を考えている。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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