練習時間“半減”でも「カバーできる」 親子の負担解消…創部50年強豪が下した決断

創設50年を迎える伊左座ヤンキース【写真:チーム提供】
創設50年を迎える伊左座ヤンキース【写真:チーム提供】

福岡の強豪学童・伊左座ヤンキースが練習効率化…病院と連携しトレーニングも

 いつまでもステレオタイプの指導では、選手はついてこない。指導者も考えを日々アップデートすることが重要になる。福岡県遠賀郡水巻町で活動し、今年で創部50年を迎える学童野球チーム「伊左座(いさざ)ヤンキース」は、それまで午前9時~午後4時ごろまで行っていた土日祝日の練習を、3年前から午前8時~正午までの午前中のみとした。チームを指揮する豊沢志臣(もとおみ)監督が、その意図を説明する。

「正直、親子二人三脚で頑張れる時期は、今しかないと思っています。大変なのは当たり前なのですが、その大変さを少しでも軽減したいというのと、空いた時間を、部員の兄弟や姉妹のために使ってほしいという思いから、練習時間を短縮しました」

 3年前の2021年、指揮官として思い切った決断を下した。6年生にはソフトバンクジュニアのメンバーで、今夏、所属する飯塚ボーイズで侍ジャパンU15日本代表に選出された中島齊志(なるし)内野手が在籍。その中島を主将とし、チームとして結果が出ているタイミングで改革に踏み切った。

「今後、ヤンキースを継続していくためには、どこかで舵を切らないといけないと感じていました」

 短縮された練習時間は「指導者の工夫によってカバーできると考えていた」というように、量より質が格段に上がった。新型コロナウイルスの流行で練習が思うようにできない時から、芦屋中央病院(遠賀郡芦屋町)の協力の下、リモートトレーニングを敢行。今では月に一度、リハビリ室の先生が担当トレーナーとして訪問し、ストレッチやトレーニングを指導している。選手たちは教わったメニューを参考に、各自でウオーミングアップを行ったり、課題克服に努めるなど、自主性も身に付いてきた。

ウオーミングアップも各自で考え行う【写真:内田勝治】
ウオーミングアップも各自で考え行う【写真:内田勝治】

動作解析動画が見られる環境も整備…自ら取捨選択できる選手の育成

「(担当トレーナーを)取り入れた理由は3つあります。怪我の防止、パフォーマンスの向上、そして(他チームとの)差別化ですね。今後はこういった取り組みが主流になってくると思ったので、だったら先にやっておこうと。今は、選手全員の関節の硬さと強さを測ってもらって、筋力のないところはトレーニングをはめて、柔軟性がないところはストレッチをはめこんでもらっています」

 自宅での自主練習がスムーズに行えるように、野球の動作解析などを行う「ネクストベース」のトレーニング動画が視聴できる環境も整えた。見据えるのは、勝ち負けよりも、自らが考え、取捨選択や行動ができる選手の育成だ。

「今勝っていてもしょうがないと思っています。勝負事なので、負けたくはないですけど、ゴールはそこじゃありません。子どもたちには“今のまま終わってほしくない”ということをよく話しています」

 コーチ時代の3年間を含め、指導歴20年の豊沢監督の願いは、次のステージで活躍することのできる教え子を輩出すること。これからも、半世紀の歴史があるチームの伝統を大切にしつつ、改革を続けていく。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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