広島の“人気競技”にリスクも? 不可欠な癖見抜く力…女子中学生の「正しい投げ方」
広島ピースガールズが行う女子選手が「安心して野球ができる」環境づくり
今年8月、広島市で結成された中学女子軟式野球チーム「広島ピースガールズ」は、練習を土日の週2回行い、野球を楽しみながら強くなることを目標に汗を流している。チームを率いる小林祐哉監督は、甲子園出場経験もある元高校球児。これまでの経験を基に、前例や常識にとらわれない指導を心がけている。
小林監督が大切にしているのは、プレーの基盤となる“動き”だ。そのため、キャッチボールやゴロ捕球などの基礎練習に、多くの時間を割いている。「基礎を固めれば野球がもっと楽しくなるはずですし、間違った動きのままプレーを続けてしまうと怪我のリスクも高まります」と、正しい動きを身に付ける練習に工夫を凝らしている。
その1つが、動作に癖がある選手への迅速なアプローチだ。広島県はフットベースボールが盛んな土地柄のため、チームにも経験者が多い。しかし、重い球を投げるフットベースボールの投げ方が体に染み付いていると、野球の正しい投げ方が身に付かず怪我のリスクも高まる。「キャッチボールの時間は、選手がただ投げているだけではダメだと思っています。動きに目を凝らし、違和感を覚えたらアドバイスするよう心がけています」。
また、月に1回、ウエートトレーニングの時間を設けているのも特徴だ。重視するのは瞬発系で、女性ならではのしなやかな動きを高めるメニューを専門家と共に考えている。「自宅でウエートに取り組んでいるかは、数値を見ると一目瞭然です。データをもとに選手と振り返るようにしています」と科学に基づいた指導を行っている。
選手自らが魅力を発信、女性コンシェルジュによる相談窓口も設置
アップデートされない女子野球の指導法に疑問を感じていた小林監督は、チーム結成にあたり、時代と女性に合った指導体制を整えることを最優先に考えた。現場に足を運び、SNSで海外の情報を集めるなど知識吸収も欠かさず、保護者への説明も丁寧に行っている。
「常にアップデートはしています。指導者として当たり前ですし、選手を預かる以上、やらないのは保護者の方に失礼だと思っています。私を入れて3人のコーチがいますが、選手の状態や指導法についてはミーティングで毎回共有しています」
また、選手・保護者の相談役となる“コンシェルジュ”を置いているのも特徴だ。「合宿に着替えは何着必要?」「飲み物はどれくらい持っていったらいい?」など、練習や合宿に関わる何気ない疑問や、体調のことを気軽に相談できるように、女性コンシェルジュによる相談窓口を開設している。
他にも、TikTok担当を決め、選手自らがチームの魅力を発信したり、企業とコラボして野球道具を練習で試用したりなど様々な取り組みを行い、選手が楽しく安心してプレーできる環境を整えている。
「指導を含め、女子にもちゃんとした野球を体感させてあげたいですし、何よりも今のチーム、そして野球というスポーツを好きでいてほしい。野球を通して色々な経験をして、その経験が人間形成にも役立ってくれたらと思っています」と小林監督。中学入学後も野球を続けたい女子小学生の受け皿となれるよう、今後も選手の成長につながる取り組みを続けていく。
(真田一平 / Ippei Sanada)
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