元プロ衝撃「気軽に野球できる場所がない」 “日本一楽しい平日練習”が支持集めるワケ
NPB通算176勝・星野伸之氏が指導…小学生に投打・守備の基礎を伝えるアカデミー
少年野球で抱えがちな“ストレス”のない、「日本一楽しい平日練習」が注目を集めている。阪急、オリックス、阪神で通算176勝をマークし、指導者としても1軍投手コーチを務めた星野伸之氏による、大阪市の「星野伸之野球アカデミー」では、小学生にピッチング、バッティングの基礎を教えながら、野球が好きになる空間作りを大事にしている。
子どもたちが自由にグラウンドを駆け回る。もちろん、練習着に決まりはない。夏場はほとんどが短パン、Tシャツ姿で、帽子もオリックス、阪神、MLB球団など個性あふれる子どもたちばかり。学校終わりの平日に大阪・万博記念公園で行われる練習には、地元の北摂地域に限らず、大阪市内をはじめ京都市や川西市など近隣府県から、27人もの子どもが参加している。
金子千尋(元オリックス、日本ハム)、西勇輝(現阪神)、山本由伸(現ドジャース)ら一流投手を指導してきた星野氏だが、小学生への育成については「質問があれば答えますが、あまり細かい部分は教えないようにしています」と口にする。体格や筋力、投球フォームは個々の違いがあるだけに、選手の感覚も重視し、“考える癖”を身に付ける指導を大切にしている。
「理想に当てはめるのは難しい。プロもそうですが、教科書っぽいことを教えていても、最終的には逸脱している選手は多い。イチローや由伸(山本)らは良い例ですよね。振り子打法やアームのような投げ方は、最初は周りが否定していましたが、結果を出せばそれが答えになっていく。ただし、マネをしたからといって由伸(のような投手)になれるわけではない。根本的な基礎は必要です」
グループ分けで2時間の効率的練習…理不尽な指導に悩んで来る子も
平日練習は2時間弱だが、内容は充実している。投球、打撃、内野守備、外野守備の4グループに分け、限られた時間内で効率の良い練習を行う。星野氏は主にピッチング部門を担当。フォームなどを大きくいじることはないが、「基本的には下半身を使う投球。息を吐くことで重心が下がり、軸ができる。まずは投げたり、打ったりする楽しさを感じてほしい」と説明する。
アカデミーの対象は小学4年生から6年生まで。週末はチームに所属し、平日の練習場所やスキルアップを求めて通う子が大半を占める。その一方で、チームに所属しない女子や、理不尽な指導者や方針に悩み、チームを離れざるを得ず、他競技をやりながら野球を続けている選手も参加している。
自身の息子も通い、保護者目線で運営に携わっている萩原雄一氏も「基本的には全員がピッチングはもちろん、全てのポジションを守ります。ポジションを固定しがちな指導者、大人たちの価値観に縛られることなく、多くの経験を積んでほしい」と、学童野球の環境改善に力を注いでいる。
同アカデミーは2021年からスタートし、今年で4年目を迎えた。当初、星野氏は「何をやればいいのかわからなかった」と手探りだったが、今では近隣府県から多くの子どもたちが“日本一楽しい平日練習”に足を運ぶようになった。
「子どもたちの話を聞くと、『平日に気軽に野球ができる場所がない』と言います。公園や家の前でバットを振ったらダメ、ボールを使ったらダメと。昔なら当たり前のことが、今ではたくさんの制限がかかっているので正直ビックリしました。何も気にせず週に1回、楽しみながら学べる場所としてサポートしていきたい」
理論や技術も大切だが、まずは野球を好きになり思い切り楽しむこと。中学、高校でも野球を続けられる環境を作りながら、子どもたちの可能性を伸ばしていく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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