能力劣っても「時間だけは全員平等」 “凡人”なのにオール5…野球と勉強両立のコツ
中京大中京元主将・小林満平氏が語る文武両道「二兎を追った者しか二兎を得られない」
二兎を追わなければ二兎を得られない。愛知・中京大中京で主将を務め、法政大で主力を担い、2022年まで社会人野球の東邦ガスでプレーした小林満平さんは、学生時代、勉強も野球もトップを追い求めた。全ての人に対して平等に与えられている時間を有効活用する方法や姿勢は、文武両道を目指す野球少年・少女のヒントになる。
野球か勉強かの二者択一は頭になかった。小学生の頃から、「どちらもトップ」だけを見ていた。小学4年生で野球を始めた小林さんは中学時代、愛知・三好東郷ボーイズでプレーし、日本代表として世界大会で優勝した。チーム練習は土日祝日に限られていたため、中学校では陸上部に所属。陸上と野球の“二刀流”でありながら、勉強でも存在感を発揮した。
「負けず嫌いの極みのような性格でした。ボーイズでは野球が上手くないと、周りの選手に主導権を握られます。学校生活では野球ができても、勉強ができなければ引け目を感じてしまうわけです。どうせやるなら、全てにおいて負けたくなかったですね」
小林さんは自身を「凡人」と表現する。努力せずに結果を出せる“天才”ではないと自覚していた。だからこそ、時間の有効活用と努力の継続を強く意識したという。その結果、中学の成績はオール5。名門・中京大中京に入学し、3年生の時は主軸と主将を任される中心選手となった。
「塾に通わせてもらって、両親は勉強第一という方針でした。自分としては勉強で成績を残しながら、野球でも結果を出せるところを証明したい気持ちがありました」
平日の放課後は陸上部の活動と塾、土日は目いっぱい野球をした。夜は疲れがたまっているため、小林さんは朝の時間を活用した。毎朝5時に起きて、6時まではランニングなど野球の自主練習。シャワーを浴びてから朝食までの1時間を勉強の時間に充てた。
“二兎を追う者は一兎をも得ず”ということわざがあるが、「二兎を追った者しか二兎を得られないと思っていました」と小林さん。「人は生まれた背景も能力も違いがあります。ただ、時間だけは平等です。それを中学生の段階で心の底からわかっていたのは、アドバンテージだったかもしれません」。
社会人野球でも時間を有効活用…現役中に簿記2級とITパスポート取得
中学生で身に付けた、時間を大切にする意識や習慣は、その後も生きた。中京大中京や法大でも、厳しい競争に勝ってきた要因は「時間の使い方」と「継続力」にあったと小林さんは分析している。東邦ガスに入ってからは野球を生活の中心に置きながら、簿記2級やITパスポートといった資格を取得した。
「アスリートだったので睡眠時間は確保していました。ただ、SNSを閲覧したり、何となくダラダラとテレビを見たりする時間はほとんどなかったです。そうした時間を休息と心から言い切れるのであれば良いですが、そうでないなら自分のためになる時間の使い方をしようというマインドでした」
何事も継続することが苦手な人にとっては、小林さんは別次元の人間に見えるかもしれない。なぜ、継続できるのか。心が折れたり、甘えが出たりしないのか。小林さんは、こう答える。
「継続できる理由は、自分が凡人であると自覚しているからです。積み上げ式でしか、自分より能力が高い人に勝てません。続けることがしんどいと感じた時は、野球で結果を残したいのか、寝たいのかを自分に問います。考え方をシンプルにするのが好きなんです」
小林さんは「努力しても負ける時はあります」と話す。だが、できるだけ負ける確率を下げる努力を続けてきた。天気や体調を言い訳にして野球の練習や勉強を一休みするのは簡単。その時に、「継続」を選び続けられた者には二兎を得るチャンスが広がる。
〇小林満平(こばやし・まんぺい)1996年、名古屋市生まれ。小学4年生で野球を始め、三好東郷ボーイズに所属した中学3年時に世界大会優勝。中京大中京で2年秋から主将を務め、3年夏は愛知大会に「3番・三塁」で出場しベスト4。法大では2年春と4年秋に外野手でベストナイン。大学日本代表にも選出された。東邦ガスで4年連続都市対抗野球大会に出場し、2022年に現役引退。ITコンサルティングマーケティング会社「Speee」を経て、現在は野球関連事業を展開する「Ring Match」で執行役員。
(間淳 / Jun Aida)
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