NPBジュニア監督が懸念する小学生の“同調傾向” 逸材にも「あえての厳しさ」を課すワケ

楽天ジュニアを指導する寺岡寛治監督【写真:川浪康太郎】
楽天ジュニアを指導する寺岡寛治監督【写真:川浪康太郎】

楽天ジュニアの寺岡寛治監督「試合で楽しむために練習で苦しむ」

 今月26日に開幕する、選りすぐりの逸材小学生が集まる「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024 〜第20回記念大会〜」。過去2度の優勝を誇る東北楽天ゴールデンイーグルスジュニアは、今年から球団OBの寺岡寛治さんが監督を務める。「今はエンジョイ・ベースボールが主流になっていますが、楽しむのはあくまでも試合。試合で楽しむために練習で苦しむのが僕の野球ですかね」と語る寺岡監督の真意に迫った。

 11月中旬、楽天ジュニアが合宿を行う楽天イーグルス蔵王球場(宮城県蔵王町)を訪れると、選手16人が2チームに分かれて紅白戦で汗を流していた。試合中や試合前後は本番さながらの緊張感が漂い、指導するチームスタッフ陣からは檄が飛ぶ。寺岡監督は試合後に「満塁で見逃し三振は絶対にしてはいけないよ」などと、具体的な場面を挙げながら指摘した。

 指揮官は「今日は実戦練習だったのでそこまでですけど、普段の練習ではかなり厳しく指導していますよ」と語る。もちろん罵声や怒声はないが、昨今の野球界で「エンジョイ・ベースボール」が浸透しつつある中、小学生相手でも「厳しさ」を緩めることはしない。

「メンタルを鍛えるためには『厳しさ』が必要だと僕は思います。『厳しさ』がないと接戦の時にメンタル面で負けてしまう」。寺岡監督はそう意図を明かす。

自ら率先して練習に励む楽天ジュニアの選手たち【写真:川浪康太郎】
自ら率先して練習に励む楽天ジュニアの選手たち【写真:川浪康太郎】

“群れ”で行動する現代の小学生…求める「人間的成長」

 寺岡監督が野球の技術面以上に意識して伝えているのが、「意思を持って行動する」ことの大切さだ。2023年に現役を引退し、同年から楽天イーグルスアカデミーコーチに就任。小学生年代の選手と接する中で「自分の意思を持たず、周りに流される子が多い」と感じていた。例えばグラウンド整備を自ら率先して行う選手は少なく、大半が「誰かがしているから自分も手伝おう」と動き始める。

 現代の小学生が「意思を持たない」傾向にある理由をたずねると、寺岡監督は「僕たちが小学生の頃はすべてにおいて厳しかったので、『自分から何かしないと言われてしまう』という雰囲気があった。今の小学生はそういう環境で育っていないからだと思います」と持論を語ってくれた。

 続けて「社会に出ると群れで動くことは少なくなる。自分の意思を持ってやらないと人間的成長はない」と強調。高校卒業後に九州共立大、九州三菱自動車、石川ミリオンスターズを経てNPB入りした寺岡監督だからこそ、目の前の技術向上だけでなく、教え子の将来を見据えた「厳しい」指導を心がけている。

 その上で、小学生が相手のため「難しい言葉」は使わない。野球の専門用語や四字熟語、慣用句などはなるべく避け、わかりやすい言葉を伝わるまで何度も投げかける。思いが伝われば、選手たちは全国の精鋭小学生が集う今大会でも、心から野球を楽しめるはずだ。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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