投げ方指導に紙ひこうき? 楽しすぎて涙も…大学生が仕掛ける“異例野球教室”の魅力

紙ひこうき遊びもあった野球教室【写真:佐々木亨】
紙ひこうき遊びもあった野球教室【写真:佐々木亨】

流通経済大野球部が地域の幼児を対象とした野球教室を開催

 茨城県龍ヶ崎市にある流通経済大が11月30日、親子体験型の野球振興イベントを開催した。テーマは「親子であそぼう!」。小・中学生向けの野球教室はよく耳にするが、3歳~5歳を対象とした幼児向けのものは珍しい。イベント開催に尽力した同野球部の吉澤伸容マネジャーは「野球を始めるきっかけになればうれしい」と目を細めるのだ。

 緑が鮮やかな外野の芝生に3つに区分けされたスペースが設けられ、それぞれが“野球”を楽しんだ。5歳児が集まる場所では、人気キャラクターが描かれたお手製のストラックアウト。柔らかいボールを使ったゴロ捕りやティーバッティングも行われた。自由度が増す4歳児たちは、ボールを遠くへ投げたり、打ったり。大学生が考案したペットボトル倒しなど、「ボール遊び」に夢中だ。そして、3歳児たちは、手つなぎ鬼ごっこやコロコロドッジボール。大学生が折った紙ひこうきを飛ばす姿も見られた。子どもに寄り添ってサポートする野球部員の1人は言う。

「紙ひこうきを飛ばす動きは、投げる動作そのものですよね。どこでもできるものですし、そんな『遊び』から野球に興味を持ってくれる子どもが増えてくれるといいですね」

 今回のイベントは、まさにそこが重要だった。「遊び」をきっかけに野球を始める子どもが増えてほしい。野球人口の減少を実感しているという吉澤マネージャーは、さらに思いを語る。

「イベントは、親子で楽しんでもらいたいと思って企画しました。野球は1人ではできないですし、親御さんも含めて参加してくださった人々に『野球は楽しいスポーツですよ』というものをお伝えしたかった」

ストラックアウトなどでボール遊びを楽しんだ【写真:佐々木亨】
ストラックアウトなどでボール遊びを楽しんだ【写真:佐々木亨】

“遊び”から得る新感覚「息子はボールを投げるのが初めて」

 龍ヶ崎市内の保育園に通う約50人の幼児が参加した。無邪気に遊ぶ子どもたちはもちろん、見守る保護者にとっても新たな発見と喜びがあったようだ。4歳児のスペースで、グラブをはめて柔らかなボールを楽しそうに投げる息子を見つめる母親は笑顔とともに言った。

「息子はボールを投げるのが初めてなんです。サッカーを少しだけやっていますが、野球のほうがセンスがありますね」

 5歳児スペースにいた保護者の1人はこう言う。

「今はサッカーをやっているんですけど、小学校に上がったら『野球をやりたい』と言うので参加させていただきました。ボールを打ったり、投げたり、本当に楽しそうでよかったです」

 イベントの最後は、内野のダイヤモンドを使った親子リレーだ。保護者が並走しながら、本塁から一塁まではケンケンパ、一塁から二塁の間はハードルジャンプ。二塁から三塁は目印となるコーンを置いてジグザグ走。そして、三本間では保護者や野球部員が子どもたちを背負ったり、抱っこをしながら駆ける。親子一緒に行う“遊び”を通して、野球を感じてもらうものだった。

 イベントが終わっても、子どもたちは白い歯をこぼしてグラウンドを駆けまわる。「帰りたくない」「もっと野球がやりたい」。小さな瞳に、涙とともに「楽しかった」時間を浮かべる子どもの姿もあった。その光景に、青空の下で行われた“野球教室”が果たした意義と役割を感じずにはいられなかった。

(佐々木亨 / Toru Sasaki)

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