日米170勝投手がこだわるキャッチボールの“下半身動作” 体重移動を楽にする「お尻の目」

野球教室で投球を指導する松坂大輔氏【写真:内田勝治】
野球教室で投球を指導する松坂大輔氏【写真:内田勝治】

松坂大輔さんが野球教室に参加…28チーム、約170人の子どもたちに投球指導

 制球力向上には、ステップ方向や幅、体重移動など、キャッチボールからの細かい意識づけが大切になる。西武、レッドソックスなどで活躍した松坂大輔さんが、12月1日、東京・西東京市の早大・安部球場で行われた「GRAFARE(グラファーレ)ジュニア野球教室」(タクトホーム株式会社主催)に講師役として参加。日米通算170勝を挙げた“レジェンド”が、小学生たちにピッチング向上につながるポイントを伝授した。

 松坂さんが登場すると、参加した西東京市、小平市の少年野球28チーム、約170人の子どもたちから「凄え!」と驚きの声が上がった。その後に行われた投球指導では、下半身の使い方の重要性を力説した。

「まずは投球方向に向かって、軸足のかかとから延長線上にラインを引いて、その上にステップをしてください。土のグラウンドであれば、まずはラインを引いてからキャッチボールをしてみてください」

 球の強さや細かな制球力は、踏み出した足の方向によって決まるといっても過言ではない。極端にアウトステップ(右投手であれば一塁側に寄って着地すること)すれば、体が開いてシュート回転し、インステップ(三塁側に着地)すれば、腰をうまく回すことができず、勢いのある球を投げることは難しい。一流プロでも、その時の状態によって踏み出し位置が微妙に変わってくるため、キャッチボールからラインを引いてチェックする。

 踏み出し幅も重要だ。松坂さんは現役時代、「6歩半と決まっていた」といい、マウンドで必ず歩測してから投球を開始した。この幅も、投げるたびに変わってしまうと制球が不安定になり、肩肘に余計な負担もかかる。速い球を投げようと、上半身の動きばかりに目がいきがちだが、まずは自分に合ったステップを見つけることが、投手としての基本になる。

投球の基本を教える松坂大輔氏【写真:内田勝治】
投球の基本を教える松坂大輔氏【写真:内田勝治】

重要な試合で緊張した時は「大きく深呼吸を2、3回繰り返す」

 ただ育成世代は、前にステップする際に、どうしても軸足が「くの字」に曲がってしまい、うまく体重移動ができない投手が多いという。こうなると、力が投球方向へうまく伝わらず、踏み出す足の方向性も定まらない。

「実は軸足は曲げる方が大変で、投げる方向に(体を)倒していく方が楽なんです。この方がスムーズに体重移動ができます。ただ、突っ込み癖がつく場合があるので、右投手であれば、左のお尻に目がついているイメージで、その目でずっと投球方向を見ているイメージで、体重移動をしてみてください」

 質問コーナーでは、準決勝、決勝で緊張してしまう子に、リラックスできる呼吸法を伝授した。

「僕がピンチの場面で意識していたのは、大きく深呼吸をすること。緊張している選手は、大きく息を吸えない状態になっているので、1回タイムをかけるなり、プレートを外すなりして、大きく息を吸って、ゆっくり吐くということを2、3回繰り返すと、結構落ち着きます」

 横浜高時代、PL学園との延長17回の激闘を250球完投で制し、春夏甲子園連覇を達成。プロ入り後も数々の修羅場をくぐり抜けてきた大投手のアドバイスを熱心にメモする指導者もいた。

「高校当時は1週間で2000球から2500球、多い時で3000球投げる練習をしていたので、甲子園で250球投げても、まだまだ投げられるなと思って投げていました。終わった後はもの凄くホッとして疲れましたけどね」

 松坂さんの力投は、高校野球でタイブレーク、球数制限が導入される1つのきっかけとなった。世代の中心を走り続けてきた男の“金言”は、次世代を担う子どもたちの心にも、きっと響いたに違いない。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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