「一塁駆け抜け」はどちらの足が正解? 元盗塁王が説く、スピード維持への“NG行為”
元西武・金子侑司氏が実演…「スピードを落とさない」ベースランニング
瞬時の判断力。いかにトップスピードで駆け抜けることができるか。野球でのベースラニングで身に付けておきたいポイントはいくつかある。昨シーズンまでプロ野球の一線で活躍した元西武の金子侑司氏が18日、「アシックス×金子侑司選手 走塁クリニック」で“走り”の基本を指導。ベースランニングの極意についても、参加した小中学生を前に熱心に伝えた。
たとえば、一塁ベースを駆け抜ける上で意識すべきことは何か。「いかにトップスピードに持っていけるか」も、重要な要素だろう。ゆえに「ベース手前で足(歩幅)を合わせるのが一番ダメ」だと言う金子氏は言葉をつなぐ。
「ベースの駆け抜けでは正解はなく、左右どちらの足でベースを踏んでもいいと思います。スピードを保ったまま、ベースを踏むことを意識してほしい」
一塁ベースの手前側(ホーム寄り)右下の角を足の半分で踏む大切さを伝えながら、いかに「速く駆け抜けるか」、そのために“足の合わせ”をしないことを勧める。
ベースランニングで「スピードを落とさない」ことは重要なポイント。ワンヒットで一塁から三塁へ進塁する際は、打球方向や強度によって「三塁を狙う」かどうかの判断が難しいケースもある。走者の背中側でプレーが継続されるライト前ヒットであれば、状況判断は難しく、三塁ベースコーチの動きも視界で確認しなければならない。
一塁から三塁への進塁では「忙しい動き」が多いが、そこでも意識しておきたい走塁の基本はある。三進の場合、二塁ベースを踏む前にダイヤモンドの外側に多少膨らんで走り「二塁ベースをしっかりと蹴って直線(二塁と三塁を結ぶ線上)で三塁へ向かう」のが理想だと金子氏は言う。
失敗から情報や方法を得るためにも「トライしてみる」
実戦で“成功”するためには、常にゲームを意識した練習は必要。ベースランニングで重要な瞬時の判断力も、そうした意識づけから磨かれるものだろう。また、成功の陰には、必ずと言っていいほどに「失敗」があるものだ。「失敗しないと得られない情報や方法がある」と言う金子氏は、さらこう語る。
「年齢を重ねるにつれて失敗するのが怖くなったものです。だから、若いときにたくさん失敗するべきだと思います」
盗塁においては、スタートを切らなければ何も起こらない。失敗を恐れずに「勇気を持ってスタートを切ってほしい」と金子氏は言う。たとえ失敗したとしても、そこで得た改善点を次の大きな成功へつなげていけばいい。現役時代に盗塁失敗をいくつも経験した金子氏は、トライすることで道を切り開いた。「盗塁王を獲ってプロ野球人生が変わった」と言葉に力を込める。
「プロ4年目のときですね。佐藤友亮コーチ(現日本ハムコーチ)に、外野の守備や走塁で失敗して厳しい言葉をかけられて……。『おまえは3年間、何をしていたんだ』と。同時に『おまえには一番になるものがあるじゃないか』とも言われました」
それが転機となり、プロの世界で生きていく自らの武器、すなわち“足”への意識が高まって、その年に1度目の盗塁王を手にしたのだという。失敗から得た成功。ベースラニングにおいても重要な「トライする」姿勢、そこにある失敗を恐れない勇気を持ち続けることの大切さも、金子氏は説いた。
(佐々木亨 / Toru Sasaki)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/