コントロール荒れる投手の共通点「グチャグチャ」 ボールなしで精度高める“分解練習”

対談を行った攝津正氏(右)とDeNA・石田裕太郎【写真:高橋幸司】
対談を行った攝津正氏(右)とDeNA・石田裕太郎【写真:高橋幸司】

元鷹・攝津正氏とDeNA・石田裕太郎が小中学生にも参考になる「制球力向上術」を語り合う

 偶然にも、制球力向上のために共通で取り組んだ“練習方法”があるという。現役時代にソフトバンクで新人王と最優秀中継ぎのタイトルを獲得し、先発転向後も沢村賞、最多勝に輝いた野球評論家・攝津正氏。その攝津氏の得意とするシンカーを大学時代に動画サイトで徹底研究し、プロ1年目の昨年4勝をマークしたのがDeNA・石田裕太郎投手だ。両右腕は制球の良さでも共通。春季キャンプ前の1月中旬、都内で初対面を果たした2人は、少年野球にも参考になる“コントロールを良くする方法”を語り合った。

 これは小・中学生にとっても耳よりの話だろう。攝津氏はソフトバンク一筋10年間で79勝49敗73ホールド、防御率2.98をマーク。制球力が出色で、通算1063回2/3を投げ330四球。“4未満で一流”といわれる与四球率(9イニングあたりの与四球数)が2.79だった。

 一方、石田もルーキーイヤーの昨年、12試合4勝3敗、防御率3.79。59回を投げてわずか12四球にとどめ、与四球率は1.83。6月16日の西武戦(ベルーナドーム)で95球を投げて4安打完封し、“マダックス”(100球未満での完封)を成し遂げられたのも、抜群のコントロールがあればこそだ。

 2人はどうやって制球力を磨いたのだろうか。攝津氏は秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)を経て、プロ入り前に社会人野球のJR東日本東北で8年間プレーしたが、「21~22歳の頃、肘を痛めて投球できない期間があった。怪我をしたということは、何か原因があるはずだと考え、自分の投球フォームをじっくり見直した」ことが転機になった。ポイントの1つが、踏み出し足の“着地位置”だ。

「ボールを持っての投げ込みをしなくても、下半身の動きだけを延々と繰り返すことはできます。分解して練習するのも1つの手だと思います」と攝津氏。当初は踏み出す左足が一塁側に開いてしまいがちだったが、マウンド上に本塁へ向けて真っすぐトンボ(土をならすT字形の道具)を置き、それに沿って足を真っすぐ踏み出す動作を繰り返し、矯正したという。

 攝津氏を尊敬する石田は、「僕も高校時代に、全く同じことをやっていました」と目を輝かせる。実はくしくも、石田が静岡・静清高時代に指導を受けたコーチの小長谷(こはせ)洋介氏は、山形・きらやか銀行でプレーしていた頃、攝津氏がいたJR東日本東北に補強選手として招かれ、共に都市対抗野球大会に出場したことがある。

 マウンドにトンボを置いて踏み出す足の位置を矯正する練習は、石田が取り組んだ小長谷氏のメニューの中にあった。実戦同様にマウンドを使って練習することも大切で、石田は「高校時代には小長谷さんから『常に傾斜にいろ』と言われていた」そうだ。

2人には共通して行ってきた“制球力向上練習”があった【写真:高橋幸司】
2人には共通して行ってきた“制球力向上練習”があった【写真:高橋幸司】

無駄な動きを省くことで「テークバックも自然に小さく」

 制球力をアップさせた攝津氏には、1つ発見があった。「コントロールが良くなると、マウンドをきれいに使えるようになる」ということだ。

「常に同じ投げ方をしないと、球は同じコースには行きません。そのためにも、踏み出す足の位置は1ミリもずれたくない。同じ動きをしていれば、足も同じ所にしか着かないから、マウンドは荒れない。逆にマウンドがグチャグチャになる人は、コントロールが悪いのです」

 これには石田も「僕もマウンドは汚れないです。高校時代に『踏み出す足の位置が常に同じだ』とほめられたこともあります」と同意する。

 現役時代の攝津氏と石田の投球フォームは、テークバックが小さい点も共通している。攝津氏は制球力をアップさせていく過程で、「投球フォームにいろいろな動きが加わると、リリースまでに誤差が生じるので、極力無駄を省き、最短でリリースポイントまで来るイメージで投げるようにしました。すると、自然にテークバックがコンパクトに収まるようになりました」と説明。「ゴミ箱に投げ入れる時に、上から腕を大きく使って投げるより、下から小さく放った方が入れやすい。それと同じイメージですね」と解説する。

 石田もまた「高校入学当初にはテークバックが大きかったのですが、小長谷さんから『無駄な動きをするな』と注意されて、“野手投げ”のイメージで投げるようにしてから、コントロールがまとまってきました」とうなずく。中学までは三塁・遊撃を中心に内野も守ってきたといい、野手としての経験も生きたのだろう。

 パドレスのダルビッシュ有投手もそうだが、最近メジャーリーガーでも、テークバックがコンパクトな「ショートアーム」の投手が増えている。攝津氏は「人によって合う・合わないがあるし、無理やり変えるものではありませんが、僕はこちらの方が負担はかからないと感じています」と見ている。

 プロ生活をスタートさせたばかりの石田は、「今の野球ではスピードも大事ですが、僕の一番の長所はコントロールですし、息の長い投手はやはり制球がいいと思うので、そこは大事にしていきたいです」と肝に銘じている。小・中学生にも投手の基本中の基本として押さえてほしいところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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