長時間の打撃練習に限界「何でだろう?」 “打てる子=センス”を覆した「独自フォーム」

個の力を伸ばす育成に定評がある多賀少年野球クラブ…辻正人監督の観察力で編み出した「多賀打ち」
小学生からでも本塁打を打ちたい――。ゴロヒットだけでなく、フライやライナーで長打を打つために必要なものとはなんだろうか。Full-Countでは、打撃指導で豊富な実績を持つ指導者やトレーナーを取材。日本一3度の実績を誇り、個の力を伸ばす育成に定評がある、滋賀の学童野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督に打撃論を聞いた。
競争の激しい学童野球で、多賀少年野球クラブは2018、2019年に「全日本学童野球大会マクドナルド・トーナメント」で連覇を果たすなど、これまで3度の日本一を経験。2000年代から全国大会の常連チームとなり、罵声・怒声をなくした指導法も注目を集めた。辻監督はこれまでの監督人生を、「技術的なことがない状態で全国に出場していたのも事実」と振り返る。
当時は素振り、ティー打撃などの数をこなし、長時間練習で選手や指導者は達成感を得ていたという。だが、感覚やニュアンスだけでは、すぐに限界が訪れた。頭を悩ませていた時に「選手のなかには“突然変異”のように飛距離やアベレージを残すようになる子がいる。何でだろう?」と、考えるようになった。
「昔は何もしなくても、『打てる子=センス』という見方が大半。もちろん、体格の差などもありますが、他の子と何が違うのかを見るようになりました。打ち方、タイミングの取り方を徹底的に見て、その子のフォームにチーム全員が近づいていきました。するとまた、想像以上に打つ子が現れる。それを毎年のようにアップデートすることで『これは!』というのを理解できるようになりました」

子どもたちには直球だけでも地球に重力がある限り「動くボールを打つのは一番難しい」
長年、現場を見続け、数え切れない小学生を指導する中で得たのが、体を大きく使い飛距離を出す「多賀打ち」だ。肩幅より広めにスタンスを取り、前傾姿勢のままバットのヘッドを首、後頭部まで入れて、肩を回転させて打つ。辻監督は「一番難しいけれど、一番飛距離が出る打ち方」とし「ヘッドが入り過ぎて、振り遅れる。それをどうしていくかがポイント」と、打撃向上のヒントを口にする。
学童野球では身長などの体格差が大きなアドバンテージにもなるが、辻監督が考案した「多賀打ち」はそこに捉われることがない。「体や筋肉ではない。ボールを飛ばすコツを体感できる。そこからカテゴリーが上がるにつれて、選手たちがアレンジしていけばいい」。ミートポイントに入っていくまでに、どれだけ“助走”を付けられるかがポイントになるという。
辻監督は、子どもたちにとって「動くボールを打つのは一番難しい」と断言する。投手の投げたボールは一度、目線より高く上がり、そこから膝元付近まで落ちてくる。学童目線では、直球だけでも地球に重力がある限り“当てる動作”は困難な作業だ。それだけに、チームではなるべく置きティーなど、止まったボールを打たないことを勧めている。
勝利と育成を両立させ、全国の指導者から注目を集める辻監督は、25日から開催される「打撃強化4DAYS」に参加予定。子どもたちの打撃が飛躍的に上がる指導法の一端を紹介してくれる。
辻正人監督も登場…少年野球のバッティング指導に役立つ練習法を紹介!
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(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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