リプレー検証導入も「使うつもりはありません」 早大・小宮山監督が漏らした“本音”

早大・小宮山悟監督【写真:加治屋友輝】
早大・小宮山悟監督【写真:加治屋友輝】

「プレーしている選手にアピールする権利がない以上、ベンチから要求するのは失礼」

 連盟結成100周年を迎え、12日に春季リーグが開幕した東京六大学野球は、今季から「リプレー検証」を導入している。リーグ戦初日の2試合に、リプレー検証が要請されるシーンはなかったが、来年からの導入が決まっている「指名打者(DH)制」と合わせて、国内随一の歴史を誇る大学リーグは新時代に足を踏み入れようとしている。

 開会式直後の第1試合では、昨年春秋連覇を達成した早大が4-1で東大を下した。早大・小宮山悟監督は試合後の会見で、リプレー検証を要請する場面がなかった試合を「樹(先発の伊藤樹投手=4年)の一塁への牽制球で、1つ怪しいタイミングのものがありましたが、趣味で牽制をしている投手なので、執拗にやることもないかなと思いました」とジョークを交えて振り返った。

 ただ、リプレー検証導入に対する小宮山監督の思いは複雑なようで、「時代の流れなので仕方がないですが、個人的には最後の最後まで抗いたいと思っていました。ただ、それがいいという判断が下った以上、しっかり受け入れて、チャンスがあれば検証してもらおうと思っています」と心境を吐露した。

 リプレー検証とDH制の導入は、2日前(10日)の理事会で正式に決まった。リプレー検証は9イニングで1度、延長戦でも1度要求が可能で、判定が覆った場合はもう1度要求できる。要求できるのは監督だけで、本塁打、フォースプレー、キャッチかノーキャッチか、フェアかファウルか、死球の有無などが対象となる。

 小宮山監督は会見後にも「今のところ、使うつもりはありません。プレーしている選手にアピールする権利がない以上、遠いベンチにいる監督が要求するのは、そちらの方が(審判に)失礼だと思います」と語った。

 リプレー検証は学生野球でいち早く導入した東京六大学。DH制の方は既に大学硬式野球リーグのほとんどで採用されている。MLBのナ・リーグにも2022年シーズンから導入され、DH制のないNPBのセ・リーグにも導入を主張する声はある。むしろ、東京六大学には“9人野球”最後の砦というイメージもあった。

DH制は大学野球リーグのほとんどで採用され、高校野球でも議論されている

 DH制導入に対しても、東京六大学各監督の反応はさまざまだ。小宮山監督はこちらについても「高校生を勧誘するのに“打つだけ番長”を獲れるメリットが出てきた」と笑わせつつ、「ずっとピッチャーが打席に立つ野球をし続けてきたことに対して、ここでそれを諦めるというのは残念ではありますけれども、世の中はそういう流れですから、やむを得ないのかなと……」とコメントしている。

 プロの投手としてNPB通算117勝の実績を誇り、その大半をDH制のパ・リーグで過ごした小宮山監督が、伝統的なシステムにこれほど熱い愛着を示しているのは興味深い。指揮官は東京六大学100周年についても「簡単に100周年と言われますが、とんでもない数字です。(今季は)長い長い歴史のある東京六大学野球をこの神宮球場でご覧いただいている方々に対して、しっかりした野球をお見せするように、学生たちにきつく厳命しています」と力を込めた。

 リプレー検証やDH制の導入は、高校野球でも議論されている。伝統の保持と時代の変化を巡り、さまざまな意見が戦わされることになりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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