素振りだけでは身につかない 自宅でできるスイングスピードUPのトレーニングとは?
必要なトレーニングは素振りやフリーバッティングだけではない
肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。練習での投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぎ続けてきました。
では、成長期の選手たちが故障をせず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、いったいどのようなことなのでしょうか。この連載では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の理学療法士たちが、実際の研究に基づいたデータも交えながら、怪我をしない体作りのコツを紹介していきます。今回の担当は綿貫大佑さんと貝沼雄太さん。テーマは「トレーニングとスイングスピード」です。
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バッティングに必要な要素はスイングスピード、バットコントロール、動体視力、投手との駆け引きなど多くあります。みなさんもうまくなるためにトレーニングをしていることと思います。しかし、素振りやフリーバッティングを多くするだけで、はたして上達するのでしょうか。
今回紹介するのは、スイングスピードを上げるためのトレーニングについての研究です(※1)。この研究で対象となったのはアメリカの高校野球選手49人。2つのグループに分けて、一方は通常のトレーニングを行い、もう一方は通常のトレーニングに体の回転をするトレーニングを追加しました。トレーニング期間は12週間としています。
その結果は、通常のトレーニングを行ったグループのスイングスピードは3.6%向上し、通常のトレーニングに回転のトレーニングを追加したグループは6.0%向上していました。バットスイングの計測と同時に股関節と肩関節の動作の速さも計測しており、股関節は通常のトレーニングのグループが3.2%向上、通常のトレーニングに回転のトレーニングを追加したグループが6.8%向上、肩関節はそれぞれ2.4%、8.8%向上しました。
この研究ではさらに詳細な検討も行われており、スイングスピードと関係する因子についても調査。スイングスピードに影響する因子は除脂肪体重と体を回す筋力であったと報告しています。体を回す筋力は右打ちであれば左に回す筋力と思うかもしれませんが、意外なことに右に回す筋力もスイングスピードと強く関連していました。除脂肪体重はスピード、下半身のパワー、本塁打数、安打数、打率、盗塁と関係することも報告されています(※2)。
スイングスピードを上げるには、体を回すトレーニングと除脂肪体重の向上が必要なようです。日頃のコンディショニングとトレーニングを工夫してやってみてはいかがでしょうか。