指導者の一言に野球ママが「号泣していた」 成長しない我が子に生まれた自責の念
野球講演家・年中夢球さん、少年野球の今だけを「切り取ってはいけない」
リトルリーグなどで約20年、野球の指導者として活動した人気の野球講演家・年中夢球(ねんじゅう・むきゅう)さんは、心に刺さる言葉で数多くの選手や保護者・指導者をメンタル面でサポートしている。親の中に多いのが自分の子を他の子と比較してしまうこと。なぜ自分の子だけできないのか――。悩む母親が涙を流した年中夢球さんの言葉とは?
なかなかノックを受けていてもボールを捕球できない。そんな我が子を見た一人の母親が落ち込んでいる姿を見たのは、年中夢球さんがリトルリーグのヘッドコーチをしていた時のことだった。
「僕はそのお母さんに『ちょっと見ていてください。あいつはノックを受ける時の声が、チームで一番いいんですよ。誰が一番最初にグラウンド整備するか見てください。絶対息子さんですからね』と言ってあげたんです」
そのお母さんは息子のミスを目にするたびに「どうして、うちの子だけみんなと同じことができないんだろう」と言うのが口癖だった。だが、野球以外の部分ではそうではないことは指導者はわかっていた。「その子はね、みんなができていないことが、きちんとできていたんです」と振り返る。
他の子と比較してしまう親は多い。どうしても短所ばかりに目がいってしまうが、それでは子どもの可能性に蓋をしてしまう。年中夢球さんは「お母さんの視点を変えてあげてください。野球が上手、下手とかではなく、彼の存在はチームに必要なものなんですよという話をしました。お母さん、それ聞いて、号泣していましたけどね」。
そのお母さんから「私が間違っていました」と言われ、他人と自分の子を比較する発言はなくなったという。「少年野球の今だけを切り取って見てしまうのはいけません。今、ノックのボールが捕球できなくたって、中学、高校で野球を続けていれば、ゴロが捕れない子はそうそういなくなりますから」と親の気持ちを理解しながらも、適切な言葉を届けていた。
「青竹は4年間伸びなくても5年後に一気に伸びるんです。周りがどんどん伸びて、自分の子だけがまだ小さいと思うかもしれないけど、5年後に伸びる。目には見えないかもしれないですけど、心もちゃんと成長しているんです」
比べるのは他人ではなくて、過去の自分。そこで成長を感じてほしい。年中夢球さんからの“処方箋”はどこの家庭にも効くのではないだろうか。
(First-Pitch編集部)
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