指導者も成長する高校野球のリーグ戦 選手に謝り、方針を見直した静岡の名門校監督

ノックを打つ掛川西高校・大石卓哉監督【写真:間淳】
ノックを打つ掛川西高校・大石卓哉監督【写真:間淳】

甲子園9度出場の掛川西は昨秋から「Liga Agresiva」に参加

 大阪で始まった高校野球のリーグ戦「Liga Agresiva(リーガ・アグレシーバ)」は全国に広がり、静岡県でも昨秋から3校が参加している。その中の1校で、甲子園出場経験もある掛川西高の大石卓哉監督は、「Liga」の理念が指導者の成長につながると考えている。凝り固まった自身の指導を見直すことで、選手たちに変化が生まれてきているという。

 掛川西は春夏通算9度の甲子園出場経験がある静岡県の名門校。大石監督もOBで、現役時代は主将として1998年の夏に聖地でプレーしている。負けたら終わりのトーナメント、怒声罵声が当たり前の環境で育った中、大阪のNPO法人「BBフューチャー」が運営する「Liga Agresiva」への参加を決めたのは決意の表れだった。

「自分の凝り固まった考え方を変えないと、選手たちに良い指導ができないと思いました。Liga参加の一番の理由は指導者として成長するためです」

「Liga」は高校野球では異例のリーグ戦を採用している。選手の出場機会を増やし、敗戦を次に生かす目的があるが、根底にある理念は「スポーツマンシップ」。対戦するチームは敵ではなく相手。相手選手の好プレーを称え、審判や保護者ら野球に関わる全ての人を尊重する考え方に賛同した高校だけが、「Liga」に参加できる。

 参加には、指導者も選手も講習会の受講が条件とされている。スポーツマンシップとは何かを学ぶ場だが、大石監督は選手と一緒にオンラインで受けている。講習の内容は勉強になる。ただ、多くの指導者は肩身の狭くなるつらい時間だという。

「今までの自分の指導が間違っているとすごく気付かされます。講習を受けている選手は私を見てきます。監督の指導はリーガの理念と全然違うんじゃないかと。痛いところを突かれる苦しい講習です。でも、そこから選手に謝って、自分も変わる努力をするからと一歩踏み出さないと現状のままになってしまいます」

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