ジュニア世代の指導に必要な“魅せる”育成術 米スポーツ名門校が実践するコーチング

IMGアカデミーコーチのジョン・フォード・グリフィン氏と握手する「関メディベースボール学院」中等部の井戸伸年総監督【写真提供:関メディベースボール学院中等部】
IMGアカデミーコーチのジョン・フォード・グリフィン氏と握手する「関メディベースボール学院」中等部の井戸伸年総監督【写真提供:関メディベースボール学院中等部】

元MLB選手で「IMGアカデミー」のコーチが中学球児を指導

 ヤングリーグの強豪だった野球専門校「関メディベースボール学院」中等部(兵庫・西宮市)は先月、ポニーリーグに転籍した。これまでに様々な試みにチャレンジしてきたチームはこのほど、米フロリダ州のスポーツ名門校「IMGアカデミー」コーチの指導を受けた。自ら打撃の手本を示す指導法に、総監督も共感している。

 来日したのは、メジャーリーガーを多数輩出する名門「IMG」でコーチを務めるジョン・フォード・グリフィン氏だ。2001年ドラフト1巡目でヤンキースに入団。ドジャース、カブスなどでプレーしメジャー13試合に出場、マイナーでは通算129本塁打をマークした。引退後はメジャーリーガーの卵を指導している。

 かつてホワイトソックスとマイナー契約を結んだ経験があり、近鉄とオリックスでプレーした井戸伸年総監督は「技術的な部分もそうですが、外国の方々と若い頃に交流するのはいい経験になります」と今回の試みについて説明。これまでチームでは「打撃では体の出力を出すことが必要」と動作作りのトレーニング、ドリルなどを積極的に行ってきたといい、グリフィン氏の指導も理屈は同じだったという。

 約3時間の指導でグリフィン氏は、下半身から上半身への力の伝え方や、そこにつながる体の柔軟性などのトレーニング方法を伝えた。身振り手振りで自らの打撃を“魅せる”グリフィン氏の指導法に「ジュニア層には、納得させるものを指導者が見せないといけない。野手に関しては特にそうです」と井戸さんは語る。

 一昔前の野球界は、選手の能力について“センス”や“素質”の一言で片付けられることが多かった。なぜ速い球を投げられるのか、なぜ本塁打を量産できるかということなどについての理論、根拠を具体的に説明できない指導者は少なかった。しかし、SNSなどで誰でも情報が得られる時代になり、良くも悪くも選手たちはこれらを見極める能力が必要になってきている。

「昔に比べれば野球のレベルは格段に上がっています。知識の習得や、習慣作りは早い段階でやっておいたほうが断然、得です。悪い癖を修正するには時間がかかる。どういった指導者と出会うか、環境を選ぶことも大事になってきます」。グリフィン氏との交流は改めて“指導の質”を確かめる機会になった。井戸さんが掲げる高校、大学、社会人で通用する選手育成の方針は、より明確になったようだ。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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