「メンタルが弱い」は言い訳 少年野球の識者が指摘…実力を出せない本当の“要因”
多賀少年野球クラブ・辻正人監督「技術指導を伸ばすのがメンタル」
メンタルは鍛えられるのか。小学生の野球指導で豊富な経験を持つ2人が、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のイベントで経験談を語った。試合になるとパフォーマンスを発揮できない選手には、メンタル以外の部分に課題があると指摘した。
練習では打てるのに、試合になると結果が出ない。ブルペンとマウンドの投球が変わってしまう……。こうした悩みを持つ選手、指導者や保護者は少なくない。原因に「メンタルの弱さ」を指摘されるケースが多いが、チームを立ち上げて35年が経つ滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督は、こう話す。
「裏付けされた技術指導があって、それをさらに伸ばすのがメンタルだと考えています。メンタルに偏り過ぎると、習得できる技術が少なくなってしまいます」
辻監督はチームを3度の全国制覇に導いている。練習にメンタルトレーニングは取り入れていない。それでも、選手は試合で過度に緊張することはなく、練習と同じようにプレーできるという。
試合で起こり得る場面を練習し、想定外のない状態で試合に臨んでいるため、必要以上に緊張しない。辻監督は「メンタル」について誤解があると感じている。試合になると打てなくなると訴える選手や保護者の中には、打撃の技術が不足しているケースが多いという。
「1試合で3打席立つとしたら、打撃練習で3球のうち1球は安打性の打球を飛ばせなければ、安打の出ない試合がある計算になります。練習で10球のうち2球しか安打性の当たりを打てないのであれば、問題はメンタルではなく技術にあります。安打性の打球は印象に残りやすいので、練習では打てていると考えがちですが、技術を習得できているのか冷静に判断する必要があります」
「メンタル弱い」は逆効果…声がけも工夫が必要
また、選手に対する指導者や保護者の言葉も注意が必要だという。「メンタルが弱い」と言われた選手は、自分自身を「メンタルが弱い選手」と思い込んでしまい、力を発揮できなくなる可能性がある。辻監督は選手に「ツーストライクから強いよな~」「ツーアウト三塁から打つよな~」などと声をかけている。
学童野球や硬式クラブチームで20年間指導し、現在は野球講演家として活動する年中夢球さんも、メンタルの前に土台となる技術が必要と強調する。技術のなさをメンタルの問題にして、言い訳する選手や保護者を見てきた。試合で結果を残せない選手は「結果を考え過ぎている」「練習と試合が1本でつながっていない」と指摘する。
年中夢球さんは「試合は練習の延長線。練習を楽しくやっていて、試合は普段とは違って気合いを入れてやろうとすれば、特別な感情になるので過度に緊張してしまいます」と話す。メンタルの強さや弱さを考える前に、練習の意識や身に付けるべき技術を見直すほうが、試合で活躍する近道になる。
(間淳 / Jun Aida)
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