硬式に再転向→ドラフト候補に浮上 150キロ右腕を進化させた“準硬式の利点”
プロも注目する王子の高島泰都投手…明大では準硬式でプレー
社会人野球の強豪・王子の高島泰都投手が19日、東京ドームで行われている都市対抗野球で北海道ガスとの1回戦に先発し、7回を被安打5、無失点の好投でチームの9-0完勝に貢献した。高島は滝川西高(北北海道)時代に夏の甲子園に出場し、その後は明大の準硬式野球部に所属。さらに社会人で再び硬式球を握るというユニークな経歴を歩んだ。準硬式でプレーした“利点”を教えてくれた。
王子は都市対抗野球本戦には4年ぶりの出場で、2年目の高島はこれが東京ドーム初登板。「一つずつアウトを取ろうというのが、いい方向へ進んだと思います。初回からストレートも変化球も決まっていた。自分から崩れなかったのが良かった」と快投を振り返る。最速147キロの直球と、チェンジアップで相手打者を手玉に取った。
この好投のベースとなったのが、実は準硬式時代の経験だった。
「準硬式は金属バット。社会人では木製バットになるのはプラスです。とにかく詰まらせるようにすればいい当たりは出ないので」。いわゆる“芯”の広い金属バット相手に勝負してきた日々が生きたというのだ。
高校時代は硬式でプレーしていた。滝川西高3年時の2017年には北北海道代表として甲子園に出場。背番号10をつけ、仙台育英高との1回戦でマウンドにも立った。その時の背番号1は、この試合で北海道ガスの2番手として投げた鈴木愛斗という奇妙な縁もある。
「楽しく野球をしたい」と明大準硬式へ…出づらいはずのボールで150キロ
高校卒業後は「とにかく楽しく野球をしたい」と思っていた。そんな時、チームメートが準硬式という世界があることを教えてくれた。推薦を得て明大へ。「野球中心の生活ではなかったので、いろんな経験ができたのは良かったです」。授業にしっかり出るのはもちろん、スポーツショップでのアルバイトを経験、見聞を広げた。
ただ、限られた時間の中で練習を続けていると、眠っていた能力が開花し始めた。「硬式野球にはいい投手もたくさんいて、試合で投げられないことも多い。準硬式では実戦経験が多かったのが良かったと思う」。硬式に比べて出づらいはずの球速は、150キロを記録。2年生を終えるころには「上でも通用するのかな」と思い始めていた。3年生からはウエートトレーニングに力を入れ、体つきもどんどん変わった。
縁がつながり王子へ。再び硬式球を握った。「最初は違和感がありましたね。準硬式のほうが軽いので『硬式は重いな』とか思ったりもしました。怪我だけは怖かったですけど、前腕の筋肉を鍛えたりして……」。考えて練習するクセが「再転向」の助けとなった。
楽しく野球を続けるはずが、今やプロ野球のドラフト候補としても名前があがる。「今年が勝負だと思っています。都市対抗でチームを勝たせたい」というイケメンは「雑誌に自分が載ったりするのが不思議ですね。いつも見ています」と笑う。大会で勝ち進み、プロの扉を開くことはできるだろうか。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)
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