プロでは守備固めも…社会人でスラッガーに“進化” 戦力外を経て得た新境地
オリックス、中日でプレーした武田健吾、社会人野球でさらに進化中
選手の“成長期”は、いつ訪れるかわからない。社会人野球の強豪・三菱重工Eastでプレーする武田健吾外野手は、オリックスと中日に9年間在籍した元プロ野球選手だ。ただ、初めての社会人野球に飛び込んでの2年間で、さらに成長できた部分がある。戦力外通告から始まったスラッガーへの変身過程では、いったい何があったのだろうか。
19日に行われたNTT西日本との1回戦には「5番・中堅」で先発出場。1-1の同点で迎えた6回1死無走者で打席に立った。ここで真ん中のスライダーを仕留め、左中間スタンドに飛び込む勝ち越し弾に。何度も腕を突き上げながらダイヤモンドを1周し、これが決勝点となった。
「相手もいい投手で、低めにていねいに投げてきていた」。欲しい場面で本塁打を打てたのは、プロで養ってきた“読み”が生きたからだ。「直球が3球続いて、次来るならスライダー。できるだけ引き付けて打とうと」考えると、その通りのボールが来た。イメージ通りの打撃だった。
試合を決める一発は「プロでは中々なかったことなので……。やっぱりうれしいですよ」と口元がほころぶ。プロ野球での武田は、クリーンアップに座るような打者ではなかった。1軍通算404試合に出場して530打席、通算打率.223という成績からも分かるように、外野の守備固めという起用が多かった。
「前ならこうは打てていなかった」プロを去ったあと、アマに戻り進化
この“自画自賛”の一撃に至るまでの成長は、社会人1年目の昨季がスタートだった。高校を卒業後、即プロ入りした。戦力外通告を経て初めて飛び込んだ世界で、打撃に対する意識を変えたのだ。「前なら頭が前に突っ込んで、こうは打てていなかった。前で打ってファウルになっていたはずです。もったいなかった」。とにかく意識をセンター返しに置くことで、持ち前の身体能力を発揮できるようになったという。
さらに、昨夏は自チームが都市対抗予選で敗退。同じ神奈川の強豪・ENEOSに補強選手として加わり、優勝まで駆け上がった。ここでも様々なアドバイスを受け「ダメになった時の引き出しが増えた。戻る場所ができた感じです」。調子の波を小さくするコツを学んだ、1か月間だけ、ライバルのユニホームを着るというプロではありえない経験も、糧となっている。
負けたら終わりのトーナメント大会が主体の社会人野球は、武田のスタイルに合っていたのかもしれない。「プロでも負けていい試合なんてない。全力疾走は常にしてきました。でも社会人は、さらにみんなで1球に入っていくというか……。ヘッドスライディングが自然に出たりしますよね。みんなで勝ちに行くんです」。
自信がみなぎる言葉は、更なる活躍を期待させる。「チャンスで回った時に仕事をする、強い打者になりたい」。プロを去ってもなお歩き続ける野球の道。まだまだゴールは先だ。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)
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