暴投頻発でも「イップスではなかった」 球速160キロ台へ…向上した制球と“伝達力”

「バネ投げ」の指導を受ける選手たち【写真:間淳】
「バネ投げ」の指導を受ける選手たち【写真:間淳】

BBMC相澤一幸代表が第一人者…腱を使った「バネ投げ」

 BBCMの相澤一幸代表が第一人者となっているバネ投げは、バネのように伸び縮みする腱を使った投げ方で、小さな力で大きなエネルギーを生み出すという。バネ投げは肩や肘を故障するリスクも軽減できるとされている。

 BBCMには少年野球からプロ野球まで、カテゴリーを問わず選手が訪れる。バネ投げを学び、習得するための腱のトレーニングをしてきた選手の中には、オリオールズの藤浪もいる。阪神時代に制球が定まらずイップスとも言われた藤浪は、あらゆる手段でコントロール改善の道を探ったが、思うような効果を得られなかったという。そこで、相澤代表に相談し、バネ投げと腱トレを勧められた。

 相澤代表の下で1年間、腱トレを続けた藤浪は、腱を使って投げる感覚をつかんだ。成果として表れたのは中継ぎを務めた2020年。捕手が捕れないほどの暴投も珍しくなかった藤浪のコントロールは安定し、さらに球速は自己最速の162キロを記録した。相澤代表が語る。

「腱が使えるようになると、力がボールに伝達されて球速が上がります。トレーニングの目的は制球力の向上でしたが、ボールへの伝達力が上がって球速も上がりました。藤浪投手はイップスと言われていましたが、そんなことはないと本人に伝えていました」

阪神時代の藤浪晋太郎(写真は2021年)【写真:福谷佑介】
阪神時代の藤浪晋太郎(写真は2021年)【写真:福谷佑介】

藤浪の不安定な制球の要因は「ロストムーブメント」

 相澤代表は、藤浪の不安定なコントロールの原因にロストムーブメントを挙げる。これは体が迷ってしまい、関節が緩くなる状態を意味する。

 手首の関節が緩んでいた藤浪は、骨と骨を結ぶ腱を腱トレで使えるようにし、手首を固めてボールに力を伝達しやすい投球フォームに修正した。相澤代表は「イップスは緊張異常で、特定の動作のみ不全を引き起こします。藤浪投手は体の使い方に問題があったので、イップスとは課題解決方法が違います。パフォーマンスアップには課題を明確にして取り組むことが重要だと考えています。正しい知識と正しい体の動かし方を知らないと、課題を解決できません。それはプロでも少年野球でも同じです」と話した。

 阪神の岩貞もバネ投げと腱トレで球速が5キロほど上がった。春季キャンプを終えたタイミングで相澤代表を訪れ、フォームチェックとシーズンのルーティンを決めている。シーズン中も調子を崩した時はアドバイスを求めている。腱トレは「球速アップの近道」と効果を実感し「腱の使い方を覚えると、力を出そうとしなくても球速が出る」と話しているという。

 相澤さんの指導を受けてプロで活躍する選手には、ロッテの西野勇士投手もいる。昨秋のプロ野球ドラフト会議では、育成で3人の選手が指名された。腱を使った投げ方は、野球界の新たな常識になり得る予感がある。

(間淳 / Jun Aida)

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