素振り重視は“退屈な時間” メニュー変更で激変…野球講師が反省する「見えない練習」
素振りは小学生に必ずしも適さない…置きティーで積極性や自主性アップ
究極の打撃練習は素振り。ただ、小学生に適している練習とは言い難い。野球用品メーカーのフィールドフォースが運営する「エースフォー野球塾」で講師を務める今泉翔太さんは、学童野球の選手たちに“置きティー”を勧めている。
今泉さんは2022年まで社会人チームFedexでプレーし、現在はエースフォー野球塾で主に小学生の指導をしている。自身の経験やプロ野球選手との交流を通して、究極の打撃練習は素振りにあると考えている。同時に、小学生にはハードルが高い練習ともとらえている。
「プロ野球選手はコースや球種を想定して、今のスイングならどんな打球が飛ぶのかをイメージして素振りしています。1回の素振りの質の高さには驚かされます。ただ、そのレベルを子どもたちに求めても、退屈な練習なので継続できません」
今泉さんは打球がどこに飛ぶのか目で見えなければ、子どもたちは練習の意図や成果を理解するのが難しいと指摘する。そこで、ティースタンドを使った打撃練習を勧めている。
素振りは「結果が見えなくてもできる練習」、置きティーは「結果が見える練習」と表現する。止まっているボールを打つ置きティーは目標を設定しやすいという。今泉さんは打球を飛ばすネットを4分割して、狙ったところへ打つようにテーマを設ける。その意図を説明する。
「バットの角度やボールに当てる場所を考えながらスイングしないと、思ったところへ打球を飛ばせません。動いているボールを打つわけではないので、考えながら練習できますし、どんな打球が飛んだか結果が見えるので素振りよりも楽しく練習できます」
プロや指導者が最適と考える練習が小学生にもベストとは限らない
今泉さんは指導を始めたばかりの頃、練習メニューに素振りを取り入れていた。しかし、子どもたちの反応はよくなかった。「素振りの大切さを伝えても、子どもたちはつまらないので、心ここにあらずという状態でバットを振っていました」。
そこで、ティースタンドを使ってボールを打つメニューに変更したところ、選手の表情や動きは一変した。積極的に練習に取り組み、うまくいかなかった時は首をかしげて改善方法を考え始めた。
「失敗の理由を考えた時点で成長できます。子どもたちに素振りを押し付けてしまったことを反省しました」と今泉さんは振り返る。オンラインレッスンで指導していた選手も、レッスン以外の時間に素振りをすることはなく、ボールを打つ練習ばかりしていたという。打撃フォームや理論を説明するよりも、実際にボールを打ち、その結果から選手と一緒に修正点を探す指導にたどり着いた。
プロ野球選手や指導者が最適と考える練習が、小学生にもベストとは限らない。興味を引く教え方や練習を示せば、選手は自ら動く。自主性や積極性こそが考える力を養い、技術の向上へつながっていく。
〇今泉翔太(いまいずみ・しょうた)
1995年8月2日生まれ、福島県浪江町出身。小学3年生で野球を始める。県立福島東高校では3番・遊撃手でプレー。平成国際大では1年生からリーグ戦出場。大学4年から外野手に転向し、昨年まで社会人チームFedexに所属。現在はフィールドフォースが運営する「エースフォー野球塾」で主に小学生を指導。
(間淳 / Jun Aida)
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