なぜ打撃技術の吸収速度に差が出る? 大阪桐蔭元主将が指摘する「慣れてない」弊害
大阪桐蔭高で春夏連覇…水本弦さんはスイング数も重視した打撃指導
技術の向上は、バットを振り慣れていることが前提となる。大阪桐蔭高で甲子園春夏連覇を成し遂げ、現在は名古屋市で小・中学生を対象にした野球塾の塾長をしている水本弦さんは、「バットを振っている選手ほど技術の吸収が早い」と指摘する。野球塾のレッスンでは怪我予防を施しながら、90分間で400~500回スイングをするメニューを組んでいる。
水本さんは大阪桐蔭と亜大で主将を務め、2021年まで社会人野球の東邦ガスでプレーした。現在は野球経験者に特化した人材紹介会社を経営しながら、野球塾「Amazing・ベースボールパートナー名古屋校」で塾長もしている。小学4年から中学3年まで120人が通う野球塾は、選手6人のグループレッスンが基本となっている。
水本さんが重点を置くのは「スイングの数」。その理由を、こう話す。
「家でもバットを振っている選手は技術の吸収が早いです。それに対して、バットを振り慣れていない選手は指導内容を頭で理解しても、体を上手く動かせません。数をこなしてバットを振る力をつけなければ、技術の習得に時間がかかってしまいます」
レッスンでは6人を2人ずつに分け、マシン打撃、ティー打撃、トレーニングと3つのグループをローテーションで回す。打撃で順番を待っている選手もトレーニングするため、時間を持て余すタイミングはない。最初はヘトヘトになる選手も段々と体力がつき、集中してメニューをこなすようになるという。
型にはめた指導をせず…特徴やクセを見極め納得できるように
90分のレッスンでは、1人400~500回スイングする。ただ、このペースで小・中学生が常に全力でバットを振ると怪我のリスクがあるため、力を抜いてスイングしたり、普段とは反対の打席でスイングしたりするメニューも取り入れている。最大の目的は「バットを振り慣れる」ことにある。
スイングする習慣があるかどうかは、リズムとタイミングに表れやすいという。「バットを振り慣れていない選手はリズムが悪く、タイミングもうまく取れません。前から来る球を見慣れているかどうかも差が出やすい部分です。頭でわかっていても、体で表現できなければ打球を飛ばせませんし、理想的なフォームでスイングできても、タイミングが合わなければバットに投球は当たりません」。
バットを振り慣れた選手には、個々の特徴に合った練習法をアドバイスする。水本さんは型にはめた指導を好まない。スイングから特徴やクセを見極めて、選手の個性を生かす方法を考える。決して感覚で教えるのではなく、理屈や練習の意図を説明して、選手が納得して取り組めるように心掛けている。
指導を通じて、練習法の引き出しを増やす。だが、その教えを選手が生かすには、バットを振り慣れていることが前提となる。
(間淳 / Jun Aida)
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