小学校低学年から“闘争心”を養う方法 全国大会にも帯同…強豪学童の「意識醸成」
全国出場35度、全国制覇4度…常磐軟式野球スポーツ少年団の“伝統”
福島・いわき市の少年野球チーム「常磐軟式野球スポーツ少年団」のキッズ年代(未就学児~小学3年生)にあたる「常磐キッズ」は、怒声・罵声を排除した“脱・昭和的”な指導を徹底している。ただ、トップチーム(小学4~6年生)は35度の全国大会出場、4度の全国制覇を誇る強豪。常磐キッズの村田繁人監督は「この年代から全国大会を意識させています。子どもたち、保護者、指導者、みんなが全国を見据えています」と話す。強豪チームのキッズ年代のモチベーションをどうコントロールするのか、その秘訣に迫った。
「トップチームには素晴らしい野球の目を持った、信頼できる指導者がいます。上に送り出せば野球の技術は伸びていくと信じているので、私にできることは、運動能力を向上させることと、野球の基本的な動きを身に付けさせることだと思います」と村田監督。トップチームは土日のほか、平日も週4日の全体練習を行う。肉体的にも精神的にも1つ上のレベルが求められる数年後に備えるため、怒らずとも、決して選手を甘やかすことはしない。
リズムトレーニングなどの運動能力向上のためのメニューを取り入れるだけでなく、野球の基本、特に守備の基本は徹底して教えている。「守備を大事にするのが常磐の伝統。野球は点数を取られなければ負けない。全国大会で勝つため、点数を取られないためには守備練習を頑張ろうと伝えています」。特に冬場はゴロ捕球のコツや足の使い方を集中的に教え込むが、常に練習の目的を伝えながら選手と接している。
全国常連チームとの交流や実戦練習で早くから“強豪”の意識醸成
キッズ年代のうちから“全国”を意識させるため、トップチームが全国大会に出場する際は帯同して会場の雰囲気を味わう。また隣県である茨城・つくば市の少年野球チーム、茎崎ファイターズなど全国常連チームとの交流の機会を設けることで、日頃から「自分たちも全国で戦うんだ」という闘争心をあおっている。
「常磐の野球」を浸透させるため、今年は紅白戦など実戦の場を増やした。アウト1つや1球を大切にし、守備では最初の打者をアウトにし、攻撃では最初の打者の出塁を心がける。トップチームで普段「当たり前」にしていることを、実際にプレーする中でキッズ年代の段階から覚えさせている。
村田監督は「今ではなく、先を考えて指導しています」と力を込める。選手にとっての「先」には、トップチームに合流する近い未来だけではなく、その先の未来も含まれる。「中学、高校、大学と野球を続ける子もいますし、プロを目指す子もいる。子どもたちの可能性はどこで花開くかわからない」。すべての取り組みはチームと子どもたちの未来につながる。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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