守備力向上へ…“幅広い視野”を獲得する練習法 ボール2個で鍛えられる「予知能力」

子どもたちを指導する大引啓次氏【写真:伊藤賢汰】
子どもたちを指導する大引啓次氏【写真:伊藤賢汰】

オリックスなどで活躍した大引啓次氏が重視…守備力向上に不可欠な「周辺視」

 野球は“単に打って・走って・投げて”だけのスポーツではなく、状況に応じたプレーが求められる。アウトカウント、走者の位置――。オリックス、日本ハム、ヤクルトで13年間プレーした大引啓次氏も、守備の名手として活躍した経験を踏まえ「周辺視」の必要性を口にする。

 ゴロをさばき、送球する際には走者の動きにも目を配らなければいけない。送球、捕球のプレースキルを上げるトレーニングも大事だが、能力の高い選手ほど、“視野の広さ”を生かしたプレーでピンチを救っていくという。大引氏は「いろんなことに気づいたり、感じたり、考えたりすることで、より感性が磨かれ、ハイレベルなプレーに近づけます」と断言する。

 現役時代は主に遊撃手として活躍した大引氏。遊撃手は「華のあるポジション」と呼ばれ、守備範囲も広く、併殺やベースカバーなど多くの動きが求められる。その際に必要になるのが“周辺視野”だ。アウトカウント、打者、走者などの状況に応じて、幅広い視野で次のプレーを予測。仮に判断が一瞬でも遅れると、一気にピンチに変わってしまう。

 周囲の状況も目でとらえる周辺視を獲得するためには、実戦経験も大事だが、練習のなかでも磨くことも可能だという。大引氏が推奨するのは、バランス能力や反応能力などの運動神経を鍛える「コーディネーショントレーニング」。例えば2人で向き合い、1人が同時に投げた2個のボールを、もう1人が左右の手でつかむメニュー。慣れてきたら、ボールをクロスさせたり上下に投げたりを加えていく。さらに片足で捕球することでバランス感覚も養える。

コーディネーショントレを行う大引氏【写真:伊藤賢汰】
コーディネーショントレを行う大引氏【写真:伊藤賢汰】

練習の目的や意味を理解すればするほど、野球の技術も上がっていく

 他にも、1人が左右の手に持ったボールのいずれかを放り投げ、もう1人は、どちらが来るか素早く判断をして捕球しに行くメニューもある。上体だけで捕りに行くのではなく、足運びを意識して捕球に行くところがポイントだ。

「1つのものだけを見るのではなく、周辺視も鍛えて、周りのものの、おおよその位置や距離感を体で覚えていく。不安定な場所でも対応でき、いつもとは違う動きができるようになってくれば、野球力の向上につながっていきます」

 大引氏は自身の幼少期を「そこまで上手い選手ではありませんでした」と振り返る。絶え間ない努力と継続力に加え「野球が誰よりも好き」という思いを持ち続け、練習に取り組んでいたからこそ、プロ選手として花開いた。練習の目的や意味を理解すればするほど、野球の技術も上がっていくはずだ。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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