「インサイドアウト」「ヘッドが走る」の真意とは? 指導用語に潜む“独り歩き”リスク

野球塾を運営する下広志氏【写真:伊藤賢汰】
野球塾を運営する下広志氏【写真:伊藤賢汰】

YouTube登録者約10万人の下広志氏…専門用語の“誤解”で技術向上の妨げに

 野球用語は正しく理解しないと、パフォーマンスを落とす要因になりかねない。東京都内で小・中学生らを指導する下広志さんは、「インサイドアウト」など野球界には誤解されている言葉が少なくないと指摘する。用語が独り歩きしないよう、選手たちには、動きとのセットで覚える必要性を伝えている。

 SNSの普及によって情報があふれ、小・中学生の指導現場でも「バットはインサイドアウトで出す」「ヘッドを走らせる」といった言葉が飛び交う。野球塾「Be Baseball Academy」を運営し、YouTubeのチャンネル登録者数が10万人近い下さんは、言葉の意味を正しく理解しないと、技術向上において逆効果になってしまうと注意を促す。

 例えば、バットを内側から外側に向けてスイングするインサイドアウトについて、こう話す。

「インサイドアウト自体は打撃で必要な動きです。ただ、体の近くからバットを出す言葉の意味にとらわれて、帳尻合わせをするようなスイングをよく見かけます。腕だけでインサイドアウトの動きをつくっても、力は出ません。そういう(誤解されやすい)用語が野球には多いです」

 インサイドアウトのスイングは、胸郭を捕手側にひねって投手側にひねり戻す動き、つまり腕の筋肉よりも強くて大きな胸や背中周りの筋肉を使った動きにならなければ、意味がないのだ。

 下さんは「ヘッドを走らせる」という言葉も誤解につながりやすいと話す。バットのグリップを投手方向に移動するよりもヘッドが速く進むことを意味する表現だが、下さんは「ある程度の打撃技術や出力のある選手は、胸郭や胸椎のひねりを使わなくてもヘッドを走らせることができます。腕でバットを調整してインサイドアウトの形をつくったり、ヘッドを走らせたりしても安打の確率は上がりません」と語る。

 理想的な体の使い方をした結果、スイング軌道はインサイドアウトになり、バットのヘッドが走れば打撃の向上につながる。正確な意味や本来の狙いを理解せずに野球用語が先行すると、思い描く打球を飛ばすのは難しくなる。

(間淳 / Jun Aida)

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