“150キロ級”続々…速球派投手を育てる秘訣とは? 球速アップと相関ある「重い球」
球速アップの鍵は「いかに短い距離、時間で大きな力を出すか」
球速アップに必要なトレーニングは、”野球に近い”動作でなければ意味をなさない。近年NPBに多くの投手を輩出している仙台大には、現在も150キロ以上をコンスタントに計測する渡邉一生投手(3年)、佐藤幻瑛投手(2年)ら速球派が多数在籍している。指導する元ロッテ投手の坪井俊樹コーチは、「球速は、制球力や変化球の精度と同じ『打者を抑える手段』の1つであって、最優先ではない」とした上で、「単純にバッターからすれば速いピッチャーの方が打ちづらい」と話す。どんな方法で球速向上を図っているのか。
坪井コーチは、球速アップの観点では「いかに短い距離・時間で大きな力を出すか」を意識したトレーニングに力を入れている。バスケットボールに似た重量のある「メディシンボール」を投げるトレーニングや、短いダッシュ、ハイジャンプなどがその一例。これまでの指導経験の中で、「メディシンボールを強く投げられるかどうかと球速は相関がある」と実感している。
自身の現役当時は「体力があってなんぼ」という時代の潮流に沿って、長距離を走るラントレや数十回に及ぶポール間走を、毎日当然のように行っていた。しかし、指導者になった現在は「あまり意味がない」として、選手に長距離を走らせることはしていないという。坪井コーチは次のように考えを明かす。
「投手は12秒という限られた時間の中で、高いパフォーマンスを出し続けないといけないので、最低限の体力は必要です。ただ、長距離の体力が必要かというとそうではありません。3000メートルを速く走るより、メディシンボールを12秒間隔で投げた方が、明らかに野球に近いトレーニングになる。そういうトレーニングをした方が球が速くなるのであれば、長い距離を走らなくなるのは必然の流れだと思います」
毎日更新される“常識”…指導者も日々アップデートを
現役当時は最速を145キロまで伸ばした坪井コーチ。「もっと出したかったです。今みたいなトレーニングをしていたら、世界が変わっていたのかなとは思います」と口にする。
ただ、「常識」は時代の流れとともに変わっていく。トレーニング面以外にも、プロ野球やMLBの選手の投球動画を学生たちに見せて、下半身の使い方や腕の位置の違いを比較させたり、「ラプソード」などの最新の機器を利用した動作分析を行ったりと、現代に合った指導を心がけている。
「自分たちの常識は当然、通用しない。常識は毎日更新されるので、指導者はそれに敏感になって、毎日頭を更新しないといけない。今のトレンドを知って、それを“何となく流行しているからさせる”のではなく、なぜするのかを理解することも大切です」。球速アップに限らず、指導者の日々のアップデートは選手を育てることにつながるはずだ。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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