野球初心者指導の盲点? 「ボールが怖い」回避へ…怪我防止に教えたい“必須動作”
王貞治氏ら創設の「世界少年野球大会」でまず子どもたちに伝えた“安全確保”
ボールやバットなどの道具を扱う野球には、どうしても怪我の危険性は付きまとう。軟式球でも当たれば痛いし、特に初心者の場合は、怪我をして「野球が嫌い」とならないように細心の注意が必要だ。野球を始めたての子ども(またはその親)に“ネガティブ”イメージを持たれないためにも、第一に教えたいこととは何か。7月末から8月頭にかけて福岡で行われた「世界少年野球大会」で伝えていた“必須動作”を紹介する。
王貞治氏(ソフトバンク球団会長)と故ハンク・アーロン氏(元ブレーブス)の日米の本塁打王が、世界の子どもたちに「正しい野球」を広めようと創設され、今回で30回目を迎えた同大会。日米や欧州だけでなく、ベトナムなどの白球に馴染みのない国からも、約100人の子どもたちが集結。王氏が「世界一教え方が上手」と称える世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のコーチ11人が、明るく、楽しく、指導に当たった。
本格的に野球というものに触れる大会初日に、印象的な練習があった。2人1組となり、1人は投手役、もう1人はバットを持たない打者役。そして、投手が打者の体を目掛けてボールを投げ、それに対して打者は背中を向けて、背中にボールを当てて受けるというものだ。もちろん両者はヘルメットを被り、柔らかいボールを使って安全を図って行っている。
普段は横浜市の強豪少年野球チーム「平戸イーグルス」を率い、今回、WBSCコーチの一員として参加した中村大伸さん(元NTT東京、1996年アトランタ五輪代表)は、「野球の技術の楽しさを教えるためにも、まずは、怪我のないように安全確保が大事」と説明する。
「安全確保のためにも、一番初めに教えなければいけないのが、ボールのよけ方。これはキャッチボールの次に必ず教えています。向かってくるボールに対して顔や体の前を向けてしまったら、大きな怪我にもなりかねません。よけ方を教えるのはマストです」
恐怖心を植え付けないために…あらかじめ教えておくのも大事
例えば格闘技系のリスクの高い競技の場合、本格的に競技動作に入る前に、初心者には必ず受け身の取り方を、時間をかけて徹底的に教え込む。しかし、日本の少年野球の現場では、わざわざ時間を割いて、初心者に“受け身”の取り方を教えるというのは、あまり見聞きしたことがない。危険を伴うスポーツであるにもかかわらず、だ。
「日本ではどうしても、初めから“投げる・打つ”、といったところに目を向けてしまいがちかもしれません」と中村さん。もちろん、練習や試合経験を積むうちに、よけ方は自然に覚えていくもの、という考え方もあるが、「ボールに対する恐怖心を植え付けないためにも、あらかじめ教えておくことも大事なこと」と語る。
初心者は、何事もできないのが当たり前。また、子どもの運動不足が叫ばれて久しいだけに、大人がイメージするよりも“動けない”可能性も考慮しなければいけない。投げる・打つ・捕るなど、できたことを褒めてあげるのも大事だが、そうした楽しさの前に、まずは安全面から考えてみることも指導者には大切なことだろう。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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