「肘を前に出せ」はNG 球速アップを実現する“しなり”…指導者に求められる資質
ボールに力を伝える方法は? 米国式アカデミー「Be an Elite」松本憲明氏が解説
投球指導でよく言われるのが、リリースの際に「腕をムチのようにしならせる」という動きだ。球速アップのために必要なことは、腕を速く振りボールに力を伝えること。プロ野球選手から小学生まで幅広くサポートする、米国式野球アカデミー「Be an Elite」の松本憲明さんは「耳よりも肘が追い越さないことが大事」と語る。
松本さんは現役時代、最速151キロをマークしプロからも注目される投手だった。愛工大名電を経て東洋大に進学するもトミー・ジョン手術を受け、一度はマウンドから遠ざかる日々を過ごした。だが、肘が完治すると徳島インディゴソックスに入団し、その後は米国でプレー。最終的に契約に至らなかったが、米国での指導を受けて大きく成長できたことが自信となり、指導者の道を選択した。
日本では感覚的な指導が多く、松本さんの現役時代には、根拠を示し論理的にコーチングできる指導者は少なかったという。その1つが「肘を前に出してはいけない」こと。肘が前に出ることで、肩甲骨が開き、肩が詰まった状態になることで怪我のリスクは高くなり、ボールにも力が伝わらない。
「理想的な投球は、体の回旋で肩甲骨が内側に寄った状態で投げること。胸郭を柔らかく使い、回旋しながら、最後に腕が回ることで“しなり”ができます。視覚的なところでは、リリースの際に肘が耳(の位置)よりも出ないイメージ。もちろん、上半身だけではなく、股関節周りの使い方も大事になってきます」
技術の高さは上がってきている一方…「不器用な子が増えている」
これまで数多くの子どもたちを指導してきた松本さん。昔に比べると技術の高さは「考えられないほど、上がっています」と評価するが、「体の使い方に関しては不器用な子が増えているように思います」と危惧している。股関節、足首の硬い子が多いという。
「ピッチングには最低限必要な“柔らかさ”が求められます。NPBジュニアの選手でも、体が大きく、速い球を投げる子もいますが、フォームの観点から見ると、体格を生かして上半身だけで投球している。カテゴリーが上がる中で、成長が止まることも考え、その点も見直す必要があると思います」
過去に比べて理論も確立され、簡単に情報を得られる時代になったが、失ったものがあるのも事実。「遊びの中で自然にできていた動きが、できなくなってきている。幼少期の過ごし方で、大きな差が生まれる時代になったのかもしれません」。松本さんはこれからも基礎の大切と、卓越した技術論を子どもたちに伝えていく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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