小中学生はYouTubeで野球が上手くなれる? 日本一監督警鐘「7割は理論として疑問」
今夏全国制覇、東山クラブ監督…個々に合った指導でなければ「費やした時間が無駄に」
野球の技術や練習法を学ぶ方法は、ひと昔前と比べると大幅に増えている。YouTubeをはじめとする動画を教材にする方法も、その1つだ。ただ、今夏に日本一を達成した愛知県の中学軟式野球クラブ「東山クラブ」の藤川豊秀総監督は「小・中学生がYouTubeを参考にして上手くなるのは難しい」と指摘する。
東山クラブは、今夏の全日本少年軟式野球大会で優勝した。卒業生は甲子園で活躍したり、プロへ進んだりしており、愛知県No.1の育成力とも評されている。38年前にチームを立ち上げた藤川監督が変わらず貫いている方針が、「個々の選手に合った指導」。例えば、投球がシュート回転する課題に直面している投手の原因はいくつも考えられる。その原因を解決するためのアドバイスや練習法の提案をしなければ、状況は変わらないと指摘する。
「シュート回転する理由がAからDまで4つもあるとします。どの選手に対してもAの理由を伝えるだけの指導者は、Dの理由でシュート回転している投手を育てることはできません。シュート回転する原因を見極める指導者がいないと、選手が費やした時間は無駄になってしまいます」
打撃も同じで、指導者には打球が飛ばない原因やバットの芯に当たらない原因を正しく判断する力が求められる。言葉のかけ方も重要で、選手に「バットが下から出ている」と伝えるだけでは理解につながりにくい。バットを下から出そうとしているのか、体の使い方が良くないのか。それ以前にバットの握り方に問題があるかもしれない。
大切なのは選手の特徴を見極める判断力…上達しないのは「指導者の問題」
打ち方自体には問題はなくても、故障や疲労が原因となっている場合もある。藤川監督は「打てなくなったら、すぐにフォームをいじる指導者は少なくないと思います。私は選手に『フォームは良いよ』と声をかけることがよくあります。そのままのフォームを続けて、動体視力が良くなったり、体が大きくなったりすれば打てるようになるからです」と語る。
指導法は選手によって変わるため、藤川監督はYouTubeで公開されている動画を参考にした練習に注意を促す。動画の7割ほどは「理論や練習方法として疑問」とした上で、こう話す。
「動画の内容として間違っていなかったとしても、その選手に合うか合わないかに違いがあります。合っていると判断せずに取り入れれば、せっかく時間をかけても逆効果になる可能性もあります」
藤川監督は技術の習得には一定の時間が必要と説く。そして、「選手が上手くできないのは、選手のせいではなく、指導の仕方に問題があると思っています」と強調する。選手の特徴や課題を見極め、個々に合った方法を提案する力と引き出しが指導力の差に表れる。
(間淳 / Jun Aida)
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