元虎4番の母校は“部員2人” 指導者不足、送迎負担…過疎地で生じる「部活改革格差」
![現在部員2人で活動する和歌山・田辺市の明洋中【写真:橋本健吾】](https://full-count.jp/wp-content/uploads/2025/02/07173655/20250207_wakayamameiyo_hk.jpg)
元阪神・濱中治氏の母校、和歌山県田辺市の明洋中は1年生2人で奮闘中
公立中学校の部活動を地域のクラブや民間事業者などに委ねる「地域移行」は、2025年度までの3年間を「推進期間」と位置づけ、早期実現を目指す方針を打ち出している。スムーズに移行する地域もあれば、未だ変化が見られない地域も存在する。今回は和歌山県田辺市の明洋中で監督を務める服部浩士さんに、中学軟式野球の現状を聞いた。
和歌山県は全国で7番目に人口減少期に移った過疎先進県で、若年層の流出や高齢化が進んでいる。そのなかで、紀伊半島南西部に位置する田辺市も過疎地域に指定されており、中学校の地域移行についても前に進んでいないのが現状だ。明洋中の服部監督は「条件が整うところはいいが、県内では整わないところが多いのではないでしょうか」と語る。
服部監督は田辺高、立命大(準硬式)でプレーし、卒業と同時に地元で中学教師の道をスタート。これまで勤めた3校全てで野球部顧問を担当しており、今年で教師歴と監督歴は18年目を迎えた。明洋中は阪神で4番を務めた濱中治氏の母校。だが、部員は年々減少し、2023年は部員14人で、和歌山県総体で準優勝し近畿大会に出場。2024年は部員10人で上秋津中学校との連合チームとして活動。県総体で優勝し、近畿大会に2年連続で出場した。現在、部員は1年生2人のため、近隣2校と3校連合チームを組み活動している。
「人数が増えれば単独チームで出場は可能ですが、現状は2人だけ。より個々に時間をかけて指導できることはプラスですが、連係プレーなどはなかなかできない。そこが一番、連合チームの難しさ。地域移行で連合チームの“受け皿”が出てくるといいのですが、現実的な部分で難しいところもあります」
![明洋中の服部浩士監督(中央)と選手たち【写真:橋本健吾】](https://full-count.jp/wp-content/uploads/2025/02/07173625/20250207_wakayamameiyo2_hk.jpg)
隣町の上富田中は昨年8月から中学野球部が「上富田クラブ」を発足
県内でも地域移行の“格差”は如実に表れている。隣町の上富田中は昨年8月から中学野球部が軟式野球クラブ「上富田クラブ」を発足。上富田町は1町1中で地域の受け皿もありスムーズに進んだが、複数の地域にまたがる田辺市では、「イメージはあまりわかない」と服部監督は口にする。
現在、土日などは連合チームで集まり練習ができているが、平日は授業後にそれぞれのグラウンドで行っている。地域移行を実行しクラブチームができたとしても、遠方の中学生は平日に集まることができない可能性が高く、送り迎えなど保護者の負担は大きくなってしまう。仮に3中学の連合チームとなれば、平日は3人の外部指導員が必要になる。
都市部では部員や指導者の数は溢れているが、グラウンドがなくチーム数を増やすのは限界がある。だが、過疎地域は活動場所は確保できるものの、根本的な指導者不足や地域に適した“なり手不足”といった正反対の問題を抱えている。ちなみに田辺市では2025年度の部活動指導員報酬は時給1600円で週9時間、月上限35時間と決められている。
教員の負担軽減を目的に推進されている地域移行だが、「働き方も都市部と田舎では違う。同じ基準で統一するのは難しいのでは?」と服部監督。ただ、部活動の良さもあるのは事実で「初心者でも気軽に入部でき、スポーツの楽しさを知り、少しずつ成長していく。その過程を共有していくのも部活動の原点かもしれないですね」と語る。
すでに全国には完全移行した地域もあり、推進期間の最終年である今年は、“土台固め”の結果を見極める必要がありそうだ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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