岡山の強豪にいる最速137キロ“五刀流” マルチ才能を引き出す冬の対策「離れたらダメ」

オール岡山ヤング・大内義心【写真:加治屋友輝】
オール岡山ヤング・大内義心【写真:加治屋友輝】

オール岡山ヤングの大内義心はエース兼4番…内野も外野も捕手もこなす

 投打の二刀流を大きく超える活躍をした選手がいる。ヤングリーグ代表のオール岡山ヤング(岡山)は、中学硬式野球5リーグの全国王者による「3rdエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」(8月27~29日)で準優勝。背番号「1」の最速137キロ右腕・大内義心投手(3年)は打っては4番と、投打でフル回転。さらに内野と外野の他に捕手も務める奮闘ぶりで、同リーグ初の決勝進出に大きく貢献した。

 28日に栃木県宇都宮市のエイジェックスタジアムで行われたリトルシニア代表の世田谷西リトルシニア(東京)との1回戦に「4番・投手」で出場。3回を無失点に抑えると、その裏の攻撃で左犠飛を放って追加点をもたらした。4回からはマウンドを井澤佑馬内野手(3年)に譲り三塁の守備へ。投打にわたる活躍で“全国4冠”を目指していた強豪を撃破した。

 同日に行われたポニーリーグ代表の高崎中央ポニー(群馬)との準決勝は球数制限があるため「4番・右翼」で出場。3回に先制の投手強襲安打を放つなど2安打を放ち、バットでけん引した。6回からは捕手の守備へ。「チームが勝つためなので。いつも練習でいろんなポジションを守っているので、それなりに対応はできているのかなと思います」。登板できない分、経験が浅い投手を懸命にリードして逃げ切った。

 アマチュア野球界も“分業”が進み、エース兼4番も珍しくなってきた中で、内外野だけでなく捕手までこなす超マルチプレーヤーである。出塁すれば、エンドランなどで何度も果敢にスタートを切る。「足も結構自信があります。走れるところは走るようにしています」。投げて、打って、走って、守って、リードする。近年では珍しくなった投手と捕手の兼任について、高橋貫寛監督は「いろいろ難しいとは思うんですけど、センスがある子なので。配球とか考え方自体は投手も捕手も一緒だと思います」と信頼を寄せる。

準決勝では6回から捕手の守備についた【写真:加治屋友輝】
準決勝では6回から捕手の守備についた【写真:加治屋友輝】

冬場も続けた実戦練習…高橋監督「常に感覚を養う」

 中学硬式野球は1日最大80球、2日連投だと合計120球などの球数制限が設定されている。最速137キロ右腕の大内は1回戦で強力打線の世田谷西を無失点に抑えたものの、慎重になった部分もあり3回で56球を要した。勝ち進んだ場合も想定して、準決勝の登板回避は当然の策となる。高橋監督は「練習からいろんな場面を想定して、いろんな選手をグルグルと動かして使っています」と普段から準備しているパターンの1つだと説明した。

 大内以外の選手も、試合中にポジションのシャッフルが当然起きる。「グラウンドに入った以上は全力疾走、全力プレー、全力発声、まずは人間的に成長しようということでその辺をしっかりやらせています」と指揮官。「冬場も実戦的なことから離れたらダメ。常に実戦感覚を養っています」と寒い時期も紅白戦やシートノックで、多くの選手が複数ポジションを守れるように鍛えてきたことを明かした。

 その成果もあって堅守が光り、初出場で快進撃。29日に神宮球場で行われたボーイズリーグ代表の東海中央ボーイズ(愛知)との決勝戦は大内が先発し、4回1安打無失点と快投した。だが球数が70球に達し、4回の最後の打者の途中で2日間合計が120球を超えたため、5回からは三塁の守備へ。チームは好機で再三の送りバント失敗が響いて得点を奪えず、7回に決勝点を奪われて敗れた。

 大内は悔しさをにじませつつ「いつも通りではなかったかもしれないですけど、自分のプレーはできたかなと思います」と納得の表情。一番やりたいポジションは「投手です」と言い切り「高校入学までには140キロ以上は出したい」とさらなる成長を誓った。エース兼4番で捕手も内外野もできる“五刀流”は「高校に入ったらどのポジションで出られるか分からない。そういう意味ではいい経験ができている」と前を向く。176センチの本格派右腕が残した大きなインパクト。多彩な才能を武器に、新たなステージに挑んでいく。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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