高校生が軒並み130キロ台へ球速アップ 小学生にも推奨…走り込みより効果的な“一瞬トレ”

片脚10秒ずつ…太ももの筋肉鍛える「ブルガリアンスクワット」
野球=走り込み。その常識に疑問が投げかけられる時代になってきている。宮城県大崎市のスポーツジム「FREE STYLE ASSIST」代表で野球の指導にも携わるトレーナー・湯山介人さんも、野球における走り込みの効果に疑問を抱いた一人。試行錯誤の末、「短時間でできる瞬発系のエクササイズが技術向上を促進する」という仮説にたどり着いたという。球速アップにつながる“短時間トレ”を紹介してもらった。
湯山さんは昨年5月に地元でスポーツジムを開業。野球、空手、バレーボール、剣道、スキーなど多種多様な競技のアスリートが足を運んでおり、健康維持・増進を目的とした一般客も多い。野球においても少年野球チームから独立リーガー、NPB選手まで幅広い年代の指導、サポートを行っている。
そんな湯山さんが、球速アップにつながる“短時間トレ”として推奨するのが、「ブルガリアンスクワット」と呼ばれる動きを応用したエクササイズだ。ブルガリアンスクワットは、片方の脚をベンチなどに乗せて片足立ちになり、胸を張ったまま膝を曲げながら体を上下させるエクササイズ。片脚10秒ずつを3~4セット、約30秒の休憩を挟んで行う。
この動きに加え、体をギリギリまで下ろして元の姿勢に戻る際にジャンプの動作を入れる。ジャンプする時に前脚が胸にできる限り近づくのが理想だ。短時間でより多くの太ももの筋肉を動かすことができ、蹴る力も養える。これを指導する高校球児数人に勧めたところ、中学時代に115~120キロだった球速が軒並み130キロ台まで伸びた。
小学生年代にも効果的で、おもりなしの「自重トレーニング」から始めるのがよい。ただし、「体重が同世代の標準より過多」「下半身のどこかを怪我している」「病院から運動を止められている」のいずれかに当てはまる場合は避けた方がよいという。

バスケットボール選手の瞬発系トレーニングを野球に応用
湯山さんは「野球は数秒間の動きを繰り返し続けるスポーツなので、何十秒間も走らせるのは理にかなっていない。(このエクササイズは)一瞬の筋発揮を10秒間やり続ける。これがうまくフィットして球速アップにつながっています」と力説する。
ジムに通うバスケットボール選手が瞬発力向上を目的に実践する姿を見たのが導入のきっかけ。バスケットボールは横への動きを含むため、「もしかしたら野球にも応用できるかもしれない」と考えた。
投手は並進運動をするため縦方向の運動は適していないとの考えも否定しないが、湯山さんは計測機器「ラプソード」を用いて数値とともに球速アップの仮説を立証してきた。
「走るとしても、短い距離で、何往復するか決めて走るのが良いと思う。長い距離を走ってダレるよりは効果があるはず」と湯山さん。常識を疑い、視野を広げることで新たな可能性が開けるかもしれない。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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