球速アップへ「腕力だけ」はNG 怪我予防効果も…一流コーチが重視する“上半身の部位”

肩甲骨の柔軟性は球速向上、故障予防に繋がる(写真はイメージ)
肩甲骨の柔軟性は球速向上、故障予防に繋がる(写真はイメージ)

全国V監督や元プロコーチが解説…投球動作における“肩甲骨”の重要性

 少年野球において球速アップは、多くの投手が抱く目標だろう。しかし、近道を探すあまり腕の力に頼った投球に終始し、結果として伸び悩んだり、怪我につながったりするケースは少なくない。本当に必要なのは、力任せの練習ではなく、体の構造を理解した合理的なアプローチ。特に、取手リトルシニアの石崎学監督や元独立リーガーの長坂秀樹氏らが共通して指摘するのは「肩甲骨」の柔軟性だ。この部分の可動域が、球速と怪我の予防に直結するという。

・球速アップの鍵の1つは、腕力でなく肩甲骨の柔軟性にある。
・専門家が推奨する、自宅でもできる簡単なコンディショニングが有効である。
・体全体の連動性を高めることが、投球パフォーマンスを向上させる。

 全国制覇5度の実績を持つ取手リトルシニア(茨城)の石崎学監督は、トレーナーとしての知見を指導に活かしている。投手のパフォーマンス向上に不可欠と語るのが、肩甲骨の可動域。柔軟性を高めることで、球速向上と傷害予防の両面に効果が期待できるという。チームでは、ブルペンでの投球後などに細長い棒を使ったコンディショニングを習慣化。両肘を伸ばしたまま棒を頭上から背中側へ、そしてその逆へと動かすシンプルな動きで、棒を握る両手の間隔が狭いほど可動域が広い証拠となる。

 また、両手をそれぞれの肩に置き、両肘を胸の前で接した状態を長く保ちながら肩を大きく回すドリルも導入。地味な動きに見えるが、肩甲骨を多方向に動かす要素が凝縮されており、継続することでパフォーマンスアップが期待できるという。

 身長168センチと小柄ながら最速152キロを記録した長坂秀樹さんは、現在主宰している野球塾で、肩甲骨周りの柔軟性を高めるユニークなプログラムを考案。例えばオードリー・春日俊彰さんの「カスカスダンス」に似た、反動をつけて肩甲骨を寄せて胸を開くプログラムは、胸を張って投げることで腕が大きく回って遠心力がつくため、球速アップが期待できるという。継続できない選手には「身長190センチの投手が語るより、私の方が説得力があるはず」と、小柄な自身が体を最大限に活用して速球を投げられた経験を伝えている。

棒を使った肩甲骨トレを指導する石崎学監督(右)【写真:編集部】
棒を使った肩甲骨トレを指導する石崎学監督(右)【写真:編集部】

肘が前に出る投げ方は、肩甲骨が開いて肩が詰まった状態に

 元プロ注目投手で、渡米経験もある松本憲明さんは、技術的な観点から「しなり」を生む投球フォームを野球塾で伝授している。松本氏が危惧するのは、リリースの際に肘が耳の位置より前に出てしまう動き。これでは肩甲骨が開いて肩が詰まった状態になり、ボールに力が伝わらないばかりか、怪我のリスクも高まる。理想は、肩甲骨が内側に寄った状態で投げ、最後に腕が回ることで「しなり」が生まれる形だという。股関節や足首が硬く、体格に頼って上半身だけで投げる投手は伸び悩む可能性が高いため、全体的な体の動かし方を見直す必要性を訴えている。

 いずれも、球速アップの本質が単なる筋力強化ではなく、肩甲骨を中心とした体全体の柔軟性と連動性にあることを示している。プロの指導者たちが語る理論や実践的なメニューを参考に、指導者や保護者は、選手の可能性を最大限に引き出すサポートを心がけたい。

・球速アップには、肩甲骨の可動域を広げるコンディショニングが不可欠。
・練習の意図を理解し、選手が飽きずに継続できる工夫を取り入れる。
・体全体の連動性を意識し、上半身の力みに頼らないフォームを構築する。

(First-Pitch編集部)

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